スマートファクトリーなど工場においてもITを使った自動化が大きな注目を集めているが、現実的には工場内作業には多くの手作業が残されており、それを解決する機器が存在しない場合も多い。工場では日々そうした作業を効率化する小さな改善を積み重ねているわけだが、本稿ではOKIが行った取り組みを紹介する。
IoT(モノのインターネット)など最先端の技術を活用した工場の効率化を目指す、スマートファクトリー化への動きが活発化しているが、現実的には工場内にはまだまだ数多くの手作業が残されており、それを解消するのに最適な機器や設備が存在しないという場合も多い。工場で日常的に行われているのは、そうした手間や負担の大きな作業を、小さな工夫やアイデアで改善していくという取り組みである。本稿では、沖電気工業(OKI) 本庄工場でのロット控え装置における改善を紹介する。
OKIの本庄工場は、2002年にスタートしたEMS(Electronics Manufacturing Service、電子機器生産受託サービス)事業の中心拠点である。EMSといえば、民生品を活用した大規模な生産サービスなどが注目を集めるが、同社はB2Bを基軸とした高付加価値で、多品種少量生産を対象としていることが特徴だ。業種としては、産業機器、計測機器、情報通信機器、医療関連機器などを対象としている。
生産受託サービスを展開する上では、工場の技術力や工夫は欠かせない。同工場はもともと電子通信機器や、ATMなど金融機関向けの製品を提供するなど、要求される技術水準が高い製品を作り続けてきたため、高い生産技術を持つ。これらのノウハウを凝縮し「Advanced - M&EMS」として展開。さらに、人手で取り組む作業を代替する内製の製造機械を活用し、工場の効率と品質を向上させる「ハイブリッドモノづくり」を推進している。
こうした取り組みの1つとして取り組んだのが、実装基板に設置した部品のロット控え装置の開発である。同社では数多くの基板実装を行っているが、その際に搭載した部品のロットナンバーについて従来は手作業で控えていた。1基板当たりに50以上の部品が実装されているケースも多く、作業員の拘束時間が非常に長くなる一方で、当然ながら多くのミスが発生していた。
OKI EMS事業本部生産技術部 部長の町田政広氏は「作業員の負担が大きかった一方でミスが多く発生しており、トレーサビリティの観点からも課題だと感じていた。トレーサビリティに対する要求は高まっていく一方であるので、自動化を含めた解決に取り組む必要があると考えた」と述べる。
同工場ではこれらの作業を自動化するための専用機器を探したという。しかし「コストに見合う形で必要な機能を満たすような機器を見つけられなかった」と町田氏は述べる。そこで、老朽化により遊休資産化していた外観検査装置を改造し、同作業を行うことにしたという。
外観検査装置は、画像を撮影して異常箇所などを検出する装置であるので、撮影機能を持つ。同機能を生かして、搭載部品の写真を抜き出してExcelで台帳化する機能をソフトウェア開発によって実現した。同装置の開発は2005年に行われたが、これによって従来の目視と手作業による作業から、作業時間を5分の1以下に削減することに成功した。
さらに2017年1月には、同装置の新バージョンを開発。さらなる改善を実現している。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.