ここまで述べてきたように大きな変化、変革の波にさらされている電力業界において、今、そしてこれからどんな人材が必要とされているのでしょうか? その答えを一言で述べるならば「多種多様な人材」ということになります。なぜなら、これからの電力・エネルギー関連ビジネスには、既成概念にとらわれない多種多様なビジネス、多様性に富んだサービスが次々と生まれると考えられるからです。
一方、新しいビジネスが生まれる業界・市場で仕事をしていくとなると、当然「未知のもの、未開拓の分野に挑戦したい」という意気込み、好奇心、フロンティアスピリットを持つことが必要となります。ですから、これから電力業界、電力会社で働くことを目指す人としては、未知のものを楽しめる精神の持ち主、「未開の分野で自ら新しいビジネスを切り拓いてやろう。新たな産業の発展とともに自分自身も成長していこう!」という“未来志向型”の人が向いていると言えます。
ただしこれからの電力業界は、大きな発展性、可能性を持つと同時に、先の見えない不透明感、不安定性も持ち合わせていることは事実です。その先の見えないことを単に不安に感じて回避し、既に成熟した産業の中で安心安定を求めるのか、それともその先の見えない環境を楽しもうとするのか。おそらくこれから電力業界で働こうと考える人は、後者のタイプでないと上手くやっていけないのかもしれません。
これは1980年代のインターネット黎明期、パソコン普及の黎明期に、「これを使っていったい何ができるのか分からない。果たしてお金になるのだろうか?」と不安に思って何もしなかった人と、「これを使ってこんなこと、あんなことができるかも!」とワクワクしながら新しいアイデアを生み出していった人たちとの違いによく似ています。
今後、電力業界は電力やエネルギーという、やや専門的で一種閉ざされた世界から、もっとさまざまな分野の産業と結びつきながら、電力業界という垣根(ボーダー)を越えた新しい業界に成長していく可能性を秘めています。その新しい業界の先駆者として未来を切り拓いていきたいのか、そうでないのか。これからの電力業界を目指す人にはそうした覚悟も求められていくはずです。
本稿は『3時間でわかるこれからの電力業界 ―マーケティング編― 5つのトレンドワードで見る電力ビジネスの未来』(江田健二 /一般社団法人エネルギー情報センター 著)からの転載です(アイティメディアの表記ルールに基づいて原本から表記を一部変更しています)。
著者:江田健二氏
「環境・エネルギーに関する情報を客観的にわかりやすく広くつたえること」「デジタルテクノロジーと環境・エネルギーを融合させた新たなビジネスを創造すること」を目的に執筆/講演活動などを実施。 富山県砺波市出身。慶應義塾大学経済学部卒業。 アンダーセン・コンサルティング(現アクセンチュア株式会社)に入社。 エネルギー/化学産業本部に所属し、電力会社のCRMプロジェクト、大手化学メーカーのSCMプロジェクト等に参画。その後起業、環境・エネルギービジネスの推進や企業のCSR活動を支援している。 RAUL株式会社 代表取締役、一般社団法人エネルギー情報センター理事、一般社団法人エコマート運営委員。
一般社団法人エネルギー情報センター
エネルギーに関する正しい情報を客観的にわかりやすく広くつたえること、ITとエネルギーを融合させた新たなビジネスを創造することを目的に設立、運営。多くの人・組織が共に学び、考え、協力していく『場』となるプラットフォームを提供していきます。
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