パナソニックは工場などの屋内の位置情報を活用するソリューションを提案。自社実践ではチョコ停削減や技術伝承への活用などに成果が出始めているという。
インダストリー4.0の動きなどから工場内のICT(情報通信技術)活用が活発化している。IoTの活用においては現場情報の収集に大きな期待が集まっているが、センサーを付ければよい製造装置などでは効果的なノウハウが収集できても、人の移動や人手の作業はデータ収集が難しく、データ化において“残された領域”ということができる。
こうした問題解決の1つとして、まず人やモノの移動を把握する手段として関心が高まっているのが、屋内位置情報ソリューションである。ただ従来は位置情報を把握するデバイスの精度の問題や関連アプリケーションやソリューションの不備、デバイスそのものかかる費用が高額である場合などが多く、なかなか広く利用される状況にはなかった。
この問題を解決し、汎用機器を用いて費用負担を抑えた上で屋内位置情報を活用することを目指したのが2016年7月に発表されたパナソニックの屋内位置情報ソリューションである。
同社が展開する屋内位置情報ソリューションは、独自の高指向性ビーコンと、高精度自律航法(PDR)、高精度マップマッチング(PMM)技術などを活用することで、屋内における高精度な位置情報の提供を可能とした(図1)。
低コスト化のポイントの1つは、人の位置を把握する端末としてスマートフォンを利用することだ。スマートフォンには各種センサーが搭載されているが、そのデータをそのまま利用した場合は、不規則な動きをした時などに正しい精度でデータを取得することは難しい。これに対し、パナソニックではスマートフォンやナビゲーションシステムなどで使った技術を応用した自律航法技術により、ビーコン間の位置計測を補完することで連続的に位置を把握することができるようにした。
合わせて、地図情報を用いるマップマッチング技術により、歩行経路の制約を考慮して計測誤差を補正することで精度を維持できるようにした。また、GPSとビーコンの双方を受信することで、屋内外で途切れることなくシームレスな位置情報の提供を可能としている。
Bluetoothビーコンも独自開発した。ビーコンは、ビーコン同士の電波干渉が発生することで取得する位置情報の精度が低下するという問題を抱えていたが、電波を一定方向に集中して飛ばす、高指向性ビーコンを開発したことで、干渉を抑制し、高い精度を実現。さらに高所での設置を可能とする特性なども実現した。位置の計測制度は最低でも3メートルの誤差範囲であり、動線の把握だけであれば問題ない精度を実現。さらに高さは10メートルの設置でも問題なく高精度を発揮できるという。
パナソニック AVCネットワークス社イノベーションセンター 無線ソリューション開発部 担当部長 野口浩氏は「用途としては空港や駅、モールなどのナビゲーションなどもあるが、工場や倉庫などでの作業効率向上に向けた動作分析や、侵入禁止エリアの探知などの領域で利用できると考えている」と述べる。実際に自社工場での実践事例もあるという。
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