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» 2016年07月19日 10時00分 公開

家電業界の常識「コモディティ=コストダウンが必須」は本当に正しいのか鈴村道場(3)(2/4 ページ)

[エフ・ピー・エム研究所 鈴村尚久/構成:株式会社アムイ 山田浩貢,MONOist]

今、製造業の経営者が注力すべき点

 私は長年の多業種による経営指導を通じて次のことに気付きました。

 どんなものが売れるか、どうやったらたくさん売れるか、ということについて営業部門の人や経営者は毎日考えていると思います。しかし、なかなかいい答えが見つかりませんね。

 これは売り手(営業マン)の立場だけで考えると分からなくなりますが、買い手(ユーザー)の立場に立って考えると意外と簡単なのではないでしょうか? われわれがものを買うときにどういう判断でそのものを買おうとしているかを分析してみましょう。

  1. そのものにほれ込んで(例:ブランド物のバッグ)orその機能が欲しくて(例:ハイブリッド車、4Kレビ)買う場合
  2. 価格が安いから同じものでもこちらを選ぶ場合(例:100円ショップの貼ってはがせる付せん)
  3. 別にそれ程気に入っているわけではないが、タイミングがいいから買う場合

 世の中には上記の3種類の購入動機があるはずなのに、ほとんどの企業では1と2しか考えていないことが多いのです。新商品開発で売るケースは1、それができなくなると2の選択(コモディティ=コストダウンが必須)をするしかないと思い込むのです。

 でも世の中には3のケースが結構あることを忘れているのです。

 例えば、ペットボトルのお茶です。これは1物1価ではなく、自販機、コンビニ、スーパー、ドラッグストアでそれぞれ販売している価格が異なります。特に自販機の価格が一番高いのではないかと思います。なぜ売れるのか? それはのどが渇いた人の目の前で販売しているからです。クルマをスーパーの駐車場に止めて長い距離を歩いて買い物をしてレジに並んで手に入れなくてもよいからです。

 他には事故にあって廃車になってしまった人がすぐにクルマが必要となり、今すぐ乗れる在庫車を知り合いにあたって買ったケースがあります。この時に相見積もりはしなかったのです。それはすぐに乗らなければならないからです。白い「カローラII」を購入したある著名な方は別の理由ですが、同じタイミングの例です。

 新商品を出すのもばくち、大量生産大量販売に突っ込んでいくのもばくちです。

 きちんとものの作り方、運び方、売り方を考え直しながら会社の構造改革をしていくべきなのに、そういう土台を作らなくて上記1、2の方針だけを行うから悲惨な結果が待っているのです。

 われわれが物を買う際には3つの要素が絡みながら購入を決定しているのです。

  • 1の要素が強い場合:価格の値引きを言わない。納期がかかっても我慢する。例)ドイツの高級車
  • 2の要素が強い場合:納期は我慢する。例)弁当の終売処分売り……お腹がすいても閉店近くまで我慢/スペック違いを我慢する。例)100円ショップの貼ってはがせる付せん
  • 3の要素が強い場合:スペックが違っても我慢する。価格の要求もしない

 1については主にブランドものになります。ブランドは高い品質の商品を提供し続けているために顧客から圧倒的に信頼を受けている企業、商品のことをあらわします。

 かつては日本の家電メーカーであるソニー、パナソニックに代表されますし、中国人が日本の食品、化粧品、薬を買いたいがるのは日本品質の信頼がブランドになっているからです。

 この場合、同等の他社品より値段が少々高くて納期が遅くなっても購入するでしょう。

 2の例は弁当の終売の処分売りです。時間限定で半額の値段で購入できますが、とんかつ弁当が食べたくてもそれが無くなっていればチキンかつ弁当で我慢したり(スペックが限られる)ある時刻までは買えません(お腹が減っても我慢する)。

 3についてはよくある例で説明します。

 食堂のランチ。昼休みで会議が長引いた場合に食堂で残っているor一番早く出るものを食べた経験が皆さまもあるのではないでしょうか? そういった時は大体カレーライスを食べているハズです。この場合、あるものを受け入れざるを得ないからです。

 上記のことから1、2については強く意識されていますが、3については意外と気づいていない経営者が多いのではないかと思います。特に販売部門においては3の概念は皆無と言っても過言ではないのです。ところが購入側の人達は3を求めているケースが結構多いのです。

図2 図2 消費者の購買パターン(クリックで拡大)

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