それでは、設計分野の革新を目指す「超上流デライト設計技術」とはどういうことを指すのだろうか。
現在の設計開発は、既に製品の形がある程度定まったところから始まる場合が多い。そのため、設計段階に入った時には新たな価値を想定したモノづくりができにくい状況にある。これらを改善するため、現在の設計段階のもっと前の段階(超上流)から製品開発をスタートし、それらを形にできるような新たな設計スタイルを求めるのが狙いだ。これらを効率よく進めるために、各種ツールや手法の開発や活用方法の定型化などを進めていく。
例えば、顧客ニーズや技術ニーズ、シナリオや背景、類似成功パターンなどの条件から現場課題やニーズ、気付きなどを獲得。それをデザイン思考や統計手法、ビッグデータ解析やAI(人工知能)、シミュレーションなどの各種探索手法を活用して製品の形に仕上げていくというような流れだ。これらの取り組みの中でイノベーションにつながる設計手法のベストプラクティス(優れた事例の形)を生み出していく。「顧客のニーズの先にある付加価値を実現するのに最適な設計手法を確立する」と佐々木氏は述べている。
これらの設計により生み出したものを実際に製品にするために必要になるのが「革新的生産・製造技術」である。3Dプリンタなど新たな製造技術が登場してきているが、これらの新たな価値創出を狙う設計側の思想を形にするために必要な製造能力の獲得を目指す。
主に「従来製造できないものを製造する技術」「新しいアプリ、製品、システムの価値を高めるための組み合わせ製造技術」「開発・製造期間の短縮化・低コスト化」の3つの切り口で技術開発を進める。具体的には以下の通りだ。
これらの超上流デライト設計技術と革新的生産・製造を密接に連携させることで、新たなモノづくりの姿を作り出すことを目指す。佐々木氏は「世界でさまざまな製造業革新の動きが進んでいるが、日本ならではの“イノベーションを生み出す形”のようなものを作り出したい」と述べている。
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