グローバル化の波が押し寄せる中、中堅・中小製造業にとっても海外工場の設置は大きな課題となっている。その時、意外に課題として残るのがバックボーンとなるITシステムだ。マレーシアに海外初の生産拠点を設立したというロキグループでは、総勢5人のIT部門で7カ月という短期導入を実現したというが、その時どういう選択をしたのだろうか。
製造業にグローバル化の波が押し寄せ、中堅・中小製造業でも海外での生産・販売体制が求められる時代に入っている。中堅・中小製造業にとって、海外進出は大きなチャンスである一方で、大きなリスクでもある。当然、その計画は慎重に立てることになるが、意外に後回しにされ「さて、どうしよう」となりがちなのが生産管理システムなどのITシステムの構築だ。
マレーシアに海外初の生産拠点を設立したというロキグループでは、総勢5人のIT部門で準備期間も含めて7カ月という短期間でシステム導入を実現したという。どのような決断を下して最終的なシステム構築に至ったのか。総務部 情報システムグループに話を聞いた。
創立:1978年12月12日
社員数:433人(連結、2013年9月末現在)
代表者:代表取締役社長 伊東伸
本社:東京都品川区南大井6-20-12
事業内容:フィルターカートリッジ、フィルターシステム関連機器、オゾン関連機器、アクア関連機器などの製造、販売
Webサイト:http://www.rokigrp.com/index.html
ロキグループは、1978年創業の産業用フィルター専門メーカーだ。特に磁性流動体向けフィルターに強く、エレクトロニクス、ケミカル、一般産業、ファインケミカル分野などへの展開を進めている他、最近では、水処理や飲料・食品などに業態を広げている。そんなロキグループが、新たにマレーシアへの工場進出を計画するようになったのは、顧客企業のグローバル化が進んでいることが要因だ。
従来ロキグループは日系企業を中心とし、国内での販売を中心にビジネスを展開してきた。工業用フィルターは基本的に保守・メンテナンスなどを除くと、工場の新設や増設時、新ラインの創設時に大きな売上高が発生するビジネスモデルとなっている。そのため、工場建設や新ライン建設などの数で売上高は左右されるが、国内ではここ数年新設工場の建設などは低調な状況が続く。
同社では磁性流動体向けのフィルターで高いシェアを持っているため、HDDなどを中心としたエレクトロニクス向けのビジネスの比率が大きかった。しかし、顧客となるエレクトロニクスメーカーは工場の海外移転などを進めており、国内での成長性が見込めない状況になってきていたという。
今までも売上高の15%は国内で生産したモノを顧客企業が海外に持ち出して利用するケースとなっていたが、コスト面やリードタイム短縮の面から顧客企業からも海外工場のニーズが高まり、今後の成長を考えると海外ビジネスの拡大は避けて通れない状況になっていた。そこで、今回海外工場の建設を決断するとともに、本格的に海外展開を開始することを決めたという流れだ。
総務部 情報システムグループ グループリーダーの松本喜孝氏は「4〜5年後に売上高の30%を海外から獲得したいと考えている。将来的には国内と海外の比率を50%ずつにするという目標を掲げている」と語る。
これらの目標の下、まずマレーシアに同社初の海外工場を建設することを決定。さらに、シンガポール、マレーシア、韓国に販売会社を設立することを決めた。初の海外工場の地としてマレーシアを選んだ理由については「主要顧客であるエレクトロニクス系の進出企業の工場が多くある他、欧米企業のマーケティング拠点なども設置されており、今後のビジネス拡大が見込めるからだ」(松本氏)という。
これらの工場や販売会社の設立を2014年に定める中で、ITシステムの導入準備が始まったのが2013年9月だった。
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