今回も3Dプリンタ関連が注目を集めた「第25回設計・製造ソリューション展(DMS2014)」。ここ数年、同展示会に何となくマンネリ感を感じていたプロダクトデザイナーの林田浩一氏は、DMS2014から変化の兆しを感じたという。
毎年必ずというわけではないけれど、時間が許す限り「設計・製造ソリューション展(DMS)」には出掛けるようにしている。今回の「第25回設計・製造ソリューション展(DMS2014)」は、自分が抱えているデザインプロジェクトの課題を解決するためのヒント探しも兼ね、試作や少量生産といったあたりに関連しそうなブースを中心に会場を眺めてきた。そこで感じたのは「3Dプリンタ」という言葉の影響の大きさの再認識だった。
ここ数年盛り上がりを見せている3Dプリンタ関連の展示。前回などは、まさにお祭り騒ぎといった様相を呈していたが、今回は少し落ち着いてきている印象だった。クリス・アンダーソンの書籍「MAKERS(メイカーズ)」と、そこから広がったメディア報道の影響は大きかったのだなぁとあらためて思う。
補足しておくと、お祭り騒ぎの感じが落ち着いたといっても、3Dプリンタを展示しているブースは増えてきている。前回のDMSでは多く見られた、3Dプリンタの展示やデモンストレーションを行っているブースで、動いている3Dプリンタや出力サンプルを「すごーい!!」と魔法を見るように見入っている来場者はだいぶ減り、少し落ち着いてブースを見れる雰囲気になっていたように感じた。
メイカーズ以降、一般メディア報道でも3Dプリンタという言葉を耳にする機会も増えたせいか、3Dプリンタの存在自体を知る人も増えてきている。FDM(熱溶解積層)方式の低価格な3Dプリンタが多く出てきた時期と重なったこともあるだろう。古いけど新しいモノとも言える3Dプリンタが大きく注目を浴びるようになったということでは大きな変化だ。20数年前、まだ自動車メーカーのデザイン部に在籍していた時に、初めて光造形による試作品を目の当たりにしたが、その時の衝撃は今でも忘れられない。もちろんその時代には3Dプリンタという言葉もなければ、エンドユーザーとして生活している一般の方々が、そんな技術を知る由もなかったことからすると、個人的には“ようやく”訪れたと感じる大きな変化だ。
余談ながら、その時の光造形での試作品は、積層ピッチも荒く表面が階段状みたいなもので、そのまま意匠検討に使える代物ではなかった。しかし、「型を使わずに複数個のモノを作ることができる」という事実によるインパクトは極めて大きかった。RP(Rapid Prototyping)という、(その当時の)新しい試作手法として紹介された光造形に対しては、アイデアが手早く立体化できることによる製品開発のスピードアップといった業務に密着した変化以上に、「これはやがて、少量生産ビジネスの核となるコンセプトへと発展して行くに違いない。その時に何か関わっていけるかな?」と、未来への期待にワクワクしていた記憶がある。
しかし、その後長らく国内では、光造形をはじめとした積層造形は「RPの国」から外に出てこないという状況で、(個人的に)残念という印象が強かった。それが、3Dプリンタという言葉の浸透や、ローエンド機の充実とともに様相は少しずつ変化してきているのではないだろうか。3Dプリンタ。実にシンプルで分かりやすく、可能性のイメージも膨らむ名称を与えたものだ。
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