再生可能エネルギーに注目が集まっている今、関連企業への転職を希望する人も増えてきているのではないでしょうか。今回はクリーンエネルギー分野の求人動向をお伝えします。
本記事は人材紹介会社「メイテックネクスト」河辺真典氏からの寄稿です。
福島第一原子力発電所で事故が起こってしまって以来、太陽光発電や風力発電、電気自動車など、クリーンエネルギー分野への注目がますます高まっています。転職を考えている電気系のエンジニアの皆さんの中にも、社会的意義や成長性といった観点から、「クリーンエネルギー分野に転職したい」と考えている方はいらっしゃるのではないでしょうか。
しかし、いざ転職を考えると、障壁になるのは業務経験です。電力をコントロールするパワーエレクトロニクス(パワエレ)の知識・業務経験を求める求人が中心であるため、応募条件を見て「応募できないのか」とあきらめてしまった方も多くいらっしゃると思います。
ところが、視点を変えれば状況は変わってきます。クリーンエネルギー分野の中でも、パワエレの経験がなくても応募できる求人はあるのです。例えば、スマートグリッド。発電所から変電所、家庭、家電までをネットワークでつなぎ、最適化を図ることで省エネを実現する技術です。スマートグリッドを推進するには、裾野の大きい一般家庭用の機器・サービスについて、計測・通信・解析などができるエンジニアが不可欠。多くの電気系エンジニアの方が活躍する余地があると思います。
このスマートグリッドの分野に関して、ここ5〜6年ほどの求人動向について解説したいと思います。リーマン・ショック、東日本大震災を経て、現在はどのような状況になっているのでしょうか。
2008年のリーマン・ショック以前には、海外での導入実績で先行する外資系の通信機器メーカーの採用ニーズが旺盛でした。日本の電力計メーカーへの売り込みを視野に入れて、日本法人の立ち上げ要員が必要だったのです。通信機器メーカーはパワエレ系のエンジニア、電力計メーカーは通信・ネットワーク関連の技術者を募集するなど、それぞれが弱い分野の技術者を求めていました。スマートグリッドはエンジニア転職市場において、1つのカテゴリーとして発展する兆しを見せていました。リーマン・ショック後も、求人ボリュームは落ち込みこそしたものの、求人自体は短期的な経済動向の変化によらず継続していました。
変化があったのは東日本大震災後です。原子力に代わるエネルギー源を確保するという喫緊のテーマが最優先になりました。火力発電所の再起動や、省エネ火力発電の新設ニーズ、あるいは風力発電所などの新たなエネルギープラントの新設が急ピッチに進み、プロジェクトエンジニアやプラントエンジニアが採用ニーズの中心になりました。大元の電力事情や政策が不安定になる中、オール電化などの一般家庭向けサービスはトーンダウン。発電制御にかかわるものを除き、スマートグリッドに関する採用ニーズは、一時停止や様子見の感がありました。
再び変化が起きたのは、震災後1年が経過したころ。電力供給事情が危機的な状況を脱して落ち着きを見せると、「スマートホーム」「スマート家電」などが再びテレビCMで流れるようになりました。メーカーが一般消費者に向けてPRする余裕が戻ってきたのです。
スマートグリッドに関する採用ニーズも回復しました。しかも、以前はごく限られた大手通信機器メーカーや専業会社からの募集が中心だったのが、自動車関連メーカーや新興ベンチャーまで、求人企業の幅が広がりました。以前に比べて、スマートグリッド関連のビジネスが現実性を増してきたのが要因なのでしょう。
職種で見ても、求人の幅が広がってきています。電力網との連携を含めた壮大なスマートグリッドに関する開発から、家庭内の電力消費を最適化するホームエネルギーマネジメントシステム(HEMS)まで。電気系・ソフト系のエンジニアの皆さんにとって、クリーンエネルギー分野の仕事に転職するチャンスは、かつてないほど広がってきていると言えるでしょう。
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