PCで節電効果を上げようとすれば、コンセントを抜くのが最も良い。例えば、ACアダプター単体でも電力を消費するからだ。これは極端だとしても、シャットダウンとスリープのどちらが効果的なのだろうか(図3)。
シャットダウンした場合は、シャットダウン中の消費電力はほぼゼロになるが、起動と終了時に大きな電力が必要になる。検証試験によれば、シャットダウンから起動する際に必要な電力量は、スリープから復帰する際に必要な電力量の約3倍以上だった。
一方、スリープの開始時、終了時に電力はさほど必要ないが、スリープ中、常にわずかな電力を消費する。これはメモリの内容を保持するためだ。
同社の測定結果によれば、2つの手法が釣り合うのは、Windows XPを搭載したデスクトップPCの場合、約1時間45分だ。次にPCを操作するまで1時間45分以上間が開くのであれば、シャットダウンが効果的であり、それよりも短いならスタンバイが節電には効果的だ。
なお、釣り合う時間はOSなどによって異なり、Windows XPを搭載したノートPCでは約40分、Windows 7を搭載したノートPCでは約1時間50分になる。
細かい設定条件だけでは、実際の節電効果が見えにくい。そこで同社では、90分間にPCを利用したり、離席したりする想定シナリオを考え、節電効果をシミュレートした(図4)。
Windows XPを搭載したデスクトップPCでは、マイクロソフトカスタム設定を利用したときに26%、さらにユーザーがスタンバイ操作を実行すると47%もの節電効果が得られた。Windows 7を搭載したデスクトップPCでは、33%と50%である。冒頭で紹介した35万kWという数値は、東京電力管内のPCの台数と、OSごとの比率、90分シナリオの結果から計算した最大節電可能量である。
日本マイクロソフトは、電力中央研究所に協力を依頼し、PCの節電効果の基礎データとなる各種消費電力を測定した。交流安定化電源に電力特性測定器を接続し、ここからPCに電力を供給した。消費電力だけでなく、待機電力も測定している。待機電力の測定には横川メータ&インスツルメンツの電力測定器「プレシジョンパワーアナライザ WT3000」を用いた(図A-1)。
「今回の検証では、Windows OSのバージョンによって消費電力が異なることを示すのが目的ではない」(中川氏)。そこで、現在大量に使われているPCとして、2006年当時、2008年当時、2010年に発売された売れ筋モデルを合計6種類想定し、検証試験にかけた(図A-2)。
なお、今回の検証試験で用いたWindows 7を搭載したノートPCの平均消費電力は16W、Windows Vistaでは31W、Windows XPでは36Wだった。Windows 7を搭載したデスクトップPCでは52W、Windows Vistaでは80W、Windows XPでは102Wだった。
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