ここで、1.0以降のロードマップと各盛り込まれる機能を整理しておこう。
2010年7月にリリースしたMathcad 15.0については、今後もパッチ提供などのサポートを行っていくが、2011年1月3日にバージョン1.0をリリースするMathcad Primeは、Creoと同様に12カ月ごとのメジャーバージョンアップと適宜のパッチリリースを行っていく予定になっている。
「従来のMathcad製品とMathcad Primeはまったく製品アーキテクチャが異なります。従来のMathcadユーザーにとって、Mathcad Prime 1.0は現行製品のバージョン14、15と比較すると機能面で十分でない部分もあります。今後、随時開発を進め、バージョン3.0がリリースできるころ(2013年ごろ)には100%の状態で提供できるようになると考えています」(シンプソン氏)。
Mathcad 2.0は12カ月後(2011年12月〜2012年1月ごろ)にリリースされる予定だ。このメジャーバージョンアップで盛り込まれる予定になっている要素は下記のとおり。
このほかにも、数式表現用のXML言語であるMathMLへの対応や、Webブラウズ対応、知的財産管理機能なども検討しているという。また、Mathcad Prime 1.0からの継続的な改良も行っていく計画だという。
当日示された詳細ロードマップ(下図)では、バージョン3.0でシステム・シミュレーション統合を実現し、4.0では、Mathcad Primeをベースにした横展開を目指すSDKの公開も視野に入れているようだ。
ブリーフィング後の質疑応答で興味深いコメントを得た。筆者同様ブリーフィングに参加していたメタリンク代表取締役社長 江澤智氏から「パラメトリックな設計システムを提供するPTCにとって、Mathcadによる数式記述とそのダイレクトな図面への反映が実現すると、CreoのようなCADツールは、究極的には設計意図の表現でしかないものになる。真の知的財産は数式そのものを含むMathcad側の情報ではないか」という問いがあった。
シンプソン氏はこの意見に同意したうえで、Mathcad Primeの今後のロードマップの意図を次のように語った。
「それゆえにMathcad上で知的財産管理を実現する必要があり、今後のリリースで順次実現していく予定になっています。ユーザーの皆さんにはCADデータ管理の重要性はよく理解していただけるのですが、設計意図とその計算を標準化することの重要性・価値はなかなか理解いただけない場合が多くあります。実際には、図面ではなく、設計意図こそが企業の価値であり、財産です。今後、日本の皆さんにもこの重要性を積極的にアピールしていきたいと考えています」(シンプソン氏)。
シンプソン氏の発言に同調するように、同席したPTCジャパンの担当者からは、「今後アカデミック向けやパートナー向けのコミュニティプログラムなどの実施も検討している」というコメントを得た。欧米ではコミュニティをベースとした積極的な情報流通があるものの、日本での普及はこれからという感がある。設計者の生産性向上や業務プロセスそのものの変更が期待できるだけにPTCのPLMポートフォリオ上に統合され、よりPLM的なデータ活用を実現しつつあるMathcad Primeの今後の展開に注目したい。
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