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» 2006年09月26日 00時00分 公開

組み込みLinuxの弱点は克服されたのか?組み込みLinux業界動向2006(2/2 ページ)

[近藤純司(富士通ソフトウェアテクノロジーズ),@IT MONOist]
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組み込みLinuxの課題は克服されたか?

 2年前の記事では、以下の4つの課題を挙げた。

  • リアルタイム性能の欠如
  • ハードウェア資源の大量消費
  • 高速立ち上げ、高速シャットダウン
  • カーネル技術者の不足

 これらの課題の多くは、解決または改善された。そして、成果は広く民生製品に生かされている。もちろん、これらの進化は、今後も止まることはないだろう。

リアルタイム性能の改善

 リアルタイム性能の改善については、連載「LinuxによるRTOSの実現」で、さまざまな取り組みを紹介した。

 これまでにかなり改善はされてきたものの、ITRONなどのリアルタイム処理を前提に設計されたRTOSに比べると、割り込みレイテンシ、タスクスイッチといった性能面では追い付いていない。

 最近の動向としては、Ingo Molnar氏によるRTパッチの評価がLinux Kernel Mailing List(LKML)を中心に進んでいる。RTパッチは、Linuxのリアルタイム性能を向上させる複合パッチセットであり、この中から一部の機能がメインラインカーネルに取り込まれつつある。

小メモリフットプリント化

 機器に搭載するメモリ量は、機器自体の価格に大きな影響を及ぼす。Linuxカーネルについては、ROMおよびRAMの使用量を削減するためにMatt Mackall氏がメンテナンスしているLinux-Tinyパッチから、いくつかの機能がメインラインカーネルに取り込まれた。

 さらに、カーネルの構築方法の検討が進められている。Linuxカーネルは、さまざまなコンポーネントで構成されている。そこで、それぞれのコンポーネントが消費するメモリを分析するツールなどが充実してきた。


 一方、ファイルシステムに目を向けると、配置するファイルを厳選することでファイルシステム自体の大きさを縮小したり、cramfsやsquashfs、jffs2といったデータ圧縮機構を持つファイルシステムを採用することで、ROMの使用量を削減するなどの取り組みが行われている。

 また、RAMの搭載量を削減するために、ROMにプログラムを配置したままで実行するeXecute In Place(XIP)技術を、カーネルばかりでなくアプリケーションに対しても適用するケースが多くなってきている。

バッテリライフ

 携帯機器において、バッテリライフの改善はユーザビリティの向上に直結するため、解決すべき必須課題である。現在までに、さまざまな技術が検討され、そして実現されている。例えば、主にノートPC向けに整備されてきたサスペンド/レジューム機構を組み込み機器へ応用したり、Dynamic Power Management(DPM)などCPUおよび周辺機器の電源管理を行うフレームワークの整備などが挙げられる。

 前述のXIP技術を用いて、電力消費量の少ないROMのメモリ構成比率を上げれば、バッテリライフはより改善される。

高速立ち上げ

 高速立ち上げは、最も進歩した技術の1つである。例えば、Linuxを搭載した携帯電話では、新機種がリリースされるごとに起動時間が短くなってきている。パナソニック モバイルコミュニケーションズやNECのプレゼンテーションによると、さまざまな技術が検討されて効果を上げてきたことがうかがえる。このように確立された技術は、携帯電話だけにとどまらず、さまざまな機器への応用が可能だ。


 そのほか、2006年のOttawa Linux Symposium(OLS)では、ソニーからサスペンド/レジューム機構を応用した高速立ち上げシステムが紹介された。今後、有望な技術と考えられる。

関連リンク:
ソニーのOLSでの発表

カーネル開発情報の充実

 インターネット上での情報の充実により、機器へのLinuxの移植またはデバイスドライバの開発を自ら行う環境の整備が進んだ。例えば、CE Linux Forum(CELF)が提供しているWikiシステムには良質な情報が集約され、組み込みLinux開発者の技術ポータルサイトとして機能している。

関連リンク:
CE Linux Forumのdeveloper wiki

 Wikiシステムで公開されている情報は多岐にわたるが、一部をマインドマップの形でまとめてみた。

CELF主要技術 図 CELF主要技術

組み込みLinuxをめぐる業界動向

 現在、Linux適用で最もホットでチャレンジングな分野は、携帯電話である。少なくとも3つの団体が世界的に推進に取り組んでいる。

 CELFのMobile Phone Profile Working Group(MPPWG)では、いち早く携帯電話向けのアプリケーション・プログラミング・インターフェイス(API)の策定に着手した。現在は、1.0版のリリースに向けたフォーマル・レビューを実施し、広くコメントを求めている。

 2005年11月には、Open Source Development Labs(OSDL)のMobile Linux Initiative(MLI)およびLinux Phone Standards Forum(LiPS)といった団体が、相次いで設立された。

 この2団体は、先ごろ協調して検討することに合意した。MLIがカーネルを含むOSレイヤの検討を、LiPSがアプリケーションおよびサービスレイヤの検討をそれぞれ先導する。

 そのほか、モトローラ、NEC、パナソニック モバイルコミュニケーションズ、サムスン、ボーダフォン、NTTドコモの6社からなるLinux推進団体が設立される予定である。また、WILLCOMコアモジュールフォーラムでも組み込みLinuxへの取り組みが行われている。これらの団体は、携帯電話にフォーカスした検討を行っている。しかし、これらから生み出される成果は、小メモリフットプリント、省電力、起動時間の短縮など、さまざまな機器で共通に活用できるものも多い。




 このように、組み込みLinuxはさまざまな課題が改善されて適用分野が大きく広がってきた。さらに、Linuxは革新するOSであり、その時々のニーズに合わせて進化していく。

 組み込み機器開発者が、組み込み機器設計・開発の観点でLinuxの開発コミュニティと連携していけば、Linuxは組み込み機器に最適なOSへとなっていくはずだ。


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