苦労しながらも新プラットフォームを導入できたことで、パイオニアは普及モデル「楽ナビ」のHDDタイプにもWindows Automotiveを採用、2005年秋に4機種を一斉発売した。さらに2006年春には、サイバーナビで3世代目となるWindows Automotive搭載製品(5機種)も新発売。同社のWindows AutomotiveベースのHDDカーナビは9種類となった。
フルモデルチェンジとなったサイバーナビの新製品は、VGAモニターを採用し、地上デジタル放送や音楽配信に対応。「蓄積型プローブ」と呼ぶ新しい情報サービス(注)を提供するなど、いっそう高機能化を図っている。その結果、コード数は携帯電話並みに600万ステップを超えた。2001年春モデルと比べると6倍以上である。
だからといって、エンジニアの数が急激に増えたり、開発工数が倍になっているわけではない。長岐氏は「まだまだ不十分だが、オブジェクト指向開発の利点である、モデル設計の適用、ソフトウェア部品の再利用、フレームワーク活用が進みつつある」と、全体の生産性は上がっているようだ。その背景では、新しい開発方技法を現場に根付かせるため、いまでも社内研修を地道に継続している姿がある。
しかし、製品開発のロードマップと照らし合わせると、現行プラットフォームも早晩、限界に達するのは目に見えている。長岐氏は「もう(仮想)メモリが足りない状態」と話す。カーナビは今後も機能拡張のペースは衰えないだろう。無線LANなどPC側で定着した技術を取り込んで、蓄積型プローブのようなITS(Intelligent Transport System:高度道路交通システム)アプリケーションを次々と搭載してくるだろう。強固なプラットフォームが必要だ。
常識的に考えて、パイオニアが現在採用しているWindows Automotive 4.2の延長線上で新プラットフォームを構想しているのは間違いないだろう。2007年にも登場するといわれるWindows Automotive 6.0(Windows CE 6ベース)は、各プロセスに最大2Gbytesの仮想メモリを割り当てることが可能で、同時実行が可能なプロセス数も3万2000に達する。
確かに、プラットフォームが潤沢になればなるほど、機能要求は高まり、開発現場は休まるときがないのも事実である。ただ、早い段階でPCと親和性が高いWindows Automotiveへプラットフォームを切り替えて開発環境を整えてきたことで、新技術導入の道筋は整いつつあるようだ。リーディングカンパニーであるパイオニアが近い将来、次なるプラットフォームを使ってどのような夢のあるカーナビを生み出すのか、興味深いところである。
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