マツダ 代表取締役 専務執行役員 兼 CFOのジェフリー・エイチ・ガイトン氏は「アラバマ工場の2直化でマツダや仕入先が採用した人員の多くは製造業での勤務経験がないため、働く人々のトレーニングを適切に行い、作業環境を安全にしていくこと、品質をきちんと作り込むことが重要です」とコメントしました。
アラバマ工場はトヨタ自動車とマツダの折半出資で設立されました。20km離れた場所にトヨタ自動車の別の工場があり、その他にもホンダや現代自動車、メルセデス・ベンツをはじめとする自動車関連の工場が多くあるエリアに構えています。
ジェトロによれば、アラバマ州のある米国南東部では2016年までの5年間で新車生産が63%増加しました。同時期の米国全体での伸びが37.3%だったので、ハイペースで生産を拡大していると言えます。アラバマ州政府としても新たに進出する自動車関連の企業を増やしたいタイミングだったようです。賃金や土地代が比較的安いこと、化学産業が発展しており素材を安価に調達できること、労働組合の組織率が低いことなどを武器に企業を誘致しました。
トヨタ自動車とマツダがアラバマ工場設立を発表した2018年時点では、アラバマ州は米国で5番目の自動車生産量を誇り、自動車関連で5.7万人の雇用が創出されていたそうです。そのようなエリアで、CX-50の生産の2直化に合わせて採用されたのが製造業で働いた経験のない人々である、というのは興味深いですね。
ガイトン氏から前述した以上の詳しいコメントはありませんでしたが、アラバマ州では自動車関連で働いたことのある人は既に引っ張りだこで、人手を増やすには未経験でもガンガン採用しなければならない状況であることが推測できます。
新人教育のノウハウは当然あるかと思いますが、大人数の未経験者を相手にトレーニングを行い、安全な作業環境の構築や品質の作り込みといった基本を伝えていくのは並大抵のことではなさそうです。「全く経験のない仕事をこれから新たに始める」と自分に置き換えて想像すると、不安なことや心配なことがたくさん思い浮かびます。毎日ちゃんとこなせるか、すぐ辞める事態にならないか、考えてしまいますね。
私はディスカバリーチャンネルの工場見学番組が好きで、よく見ています。自動車関連の工場で働く人のコメントを見ていると、親が長年働いていたのが親子2代で勤務するようになったとか、「このクルマを作るのは誇りだ」と自信を持っているとか、前向きなものが多いです。もちろんそういう人を選んで撮影しているわけですが、職場や自分の仕事に対してポジティブであるからこそ得られる良い効果があるように思います。
精神論はさておき、生産工程の作業内容に起因するリコールや、普段乗るクルマの個体差を考えると、より良い人材を育てることは人気車を市場にたくさん送り出していく上で絶対条件です。販売台数が増えるということは生産台数が増えるということで、生産を増やすために手を動かす人々が背後にいます。改めてそのようなところを意識すると、生産拡大に携わる全ての人がポジティブに働き、健やかであってほしいと思います。
マツダの中国事業は
日系自動車メーカー各社が中国市場で苦戦する気配が色濃く表れ始めた2023年4〜6月期の決算ですが、マツダも同様の傾向にあります。中国の販売台数は前年同期比17%減の2万台で、量販車種である「マツダ3」の販売減少が響きました。中国販売の通期目標である12.5万台(前年度比48%増)の達成は厳しいとみています。
中国は新エネルギー車(NEV)のシェア拡大のスピードが速く、エンジン車はシェアを奪われるだけでなく価格競争が激化しており、マツダもその影響を受けています。中国の生産パートナーである一汽乗用車への生産委託を終了したことが報じられていますが、CFOのガイトン氏は決算会見で市場撤退は考えていないことを強調しました。
中国市場の急速な電動化に対応するため、マツダは現地のパートナーと2025年ごろに向けてNEVのラインアップを拡大するなど対応を検討しているとのことです。また足元では、マツダ3の価格改定や、5月に販売を開始したCX-50の本格展開などで販売の回復を狙います。
米国と中国、どちらも今後の動向が気になる市場ですね。
今週はこんな記事を公開しました
- 決算発表
- 自動運転技術
- 材料技術
- リサイクルニュース
- 電動化
- 研究開発の最前線
- メカ設計ニュース
- FAニュース
- 組み込み開発ニュース
- 編集後記
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