デンソーは2023年7月28日、2024年3月期第1四半期(2023年4〜6月期)の決算を発表した。売上高は前年同期比21.0%増の1兆7129億円、営業利益が同48.3%増の944億円、当期利益が同64.7%増の855億円で増収増益だった。半導体不足の緩和、車両生産の回復、電動化や安心安全に関する製品の拡販により、売り上げが増加した。
営業利益の減益要因は電子部品を中心とする部材費やエネルギー費用の高騰が継続していることで290億円、品質関連で127億円、賃上げで70億円などがあった。一方、操業度差益や構成変動で690億円、合理化努力で115億円、為替差益で45億円などの増益要因により全体ではプラスとなった。
エネルギーや材料のコスト高騰は落ち着きつつあるものの、半導体の値上げが依然として続いている。半導体も含め部材全体で年間1000億円規模の値上げになる見通しで、この多くが半導体となる。当初の見通しよりも上振れしているが、吸収できる範囲だと見込む。
地域別の売上高は現地通貨ベースで見ても全ての地域で前年同期から増加したが、営業利益は欧州とアジアが現地通貨ベースで増益、北米は黒字転換、日本は部材やエネルギー費、品質費用の引き当てなどで減益となった。
設備投資は前年同期比11億円増の886億円だった。引き続き電動化や先進安全などの注力分野に必要な投入を行う。注力領域への投資の例としては、ユナイテッド・セミコンダクター・ジャパン(USJC)との協業による300mmウエハーで生産するIGBTの量産出荷が始まった。2024年3月期通期(2023年度)では設備投資は前回の見通しから50億円増の3700億円となる見通しだ。
研究開発費の実績は前年同期比54億円増の1328億円だった。CASE領域を中心に開発ニーズが急激に高まっており、量産設計の効率化と先行開発へのリソースシフトでメリハリのある開発を進める。先進安全技術や統合ECUなどソフトウェア開発に注力する。AI活用によるDX、ソフトウェアの価値の訴求で競争力を向上していく。
2023年度通期の業績見通し
2023年度の業績見通しは上方修正した。売上高が前回予想から4000億円増の6兆7000億円(前年度比4.7%増の増収)、営業利益が同900億円増の6000億円(同40.8%増の増益)、当期利益が同610億円増の4440億円(同41.1%増の増益)を見込む。
第1四半期が好調だった点や、想定為替レートを円安に見直すこと、第2四半期(2023年7〜9月期)での車両の増産見込みを反映した。2023年度通期の想定為替レートは1ドル=131.8円(前回予想から6.8円円安)、1ユーロ=142.4円(同7.4円円安)とした。
懸念材料としては、中国やタイでの下振れリスクがあるという。中国ではEVシフトが急速に進んでおり、品ぞろえが豊富な現地ブランドが伸びる一方で日系を含む外資系自動車メーカーのシェアが奪われている。計画から下振れするリスクは無視できないとしている。タイでは融資が厳格化しており、クルマを購入するローンが通りにくくなっている。
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