SUBARU(スバル)は2023年8月2日、電動車の投入計画のアップデートなど新体制での経営方針を発表した。
スバルでは2023年6月に代表取締役社長CEOに大崎篤氏が就任、新体制が発足した。また、2018年にスタートした中期経営ビジョン「STEP」が2023年で終了する。現在の中期経営ビジョンは、完成検査問題を受けて品質の改革に注力するとともに、環境技術や安心安全、動的質感などスバルらしさを追求することを掲げた。この取り組みの成果として、米国の消費者調査や安全性評価で高い評価を勝ち取ったとしている。安心と楽しさを軸に、機能だけでなく情緒的な価値も含めたスバルらしさを追求する方針は新体制でも継続する。
今回発表した経営方針は、2028〜2030年ごろの目指す姿に言及した。EV(電気自動車)の投入計画は、台数目標を引き上げるなど見直した。2030年ごろまでの電動化に関わる生産や開発の投資額は累計で1兆5000億円を見込む。このうちおよそ半分が電池関連の投資となる。また、国内の生産体制再編に投資する2500億円も含まれている。
従来は、2030年にHEV(ハイブリッド車)とEVを合わせた電動車の販売比率を40%とする目標だったが、EVのみで50%とし、台数では60万台とする新たな目標を示した。EV以外も含めた2030年のグローバル販売台数は120万台以上に設定した。EVのラインアップについては、2026年末までに「ソルテラ」を含む4車種としてきたが、今回、2028年末までにさらに4車種を追加し、合計8車種を展開する計画を示した。2028年に米国でのEV販売40万台を目指す。
これまで、日本の生産体制をEVシフトに合わせて再編する計画を公表していたが、米国でもEVを生産することに決めた。2027〜2028年ごろの生産開始を目指す。また、生産場所はSIA(スバル・オブ・インディアナ・オートモーティブ)を選択肢の1つとし、広く検討するという。ハイブリッドシステムの次世代「e-BOXER」も米国で生産する。
従来は国内でEV生産を先行して立ち上げてから、培ったノウハウを米国にコピーする計画だった。国内の生産体制の再編の見通しが立ったこと、混流生産ラインや新工場の工事もスタートしたことなどを踏まえ、米国でのEV生産を決定した。生産能力はグローバルで120万台レベルになる見通しだ。
トヨタ自動車とのEV関連の共同開発も継続する。その一方でどのような独自領域に取り組むかはスバルの課題であり、価値づくりにもつながるところだ。独自領域で別の取り組みが進んでも、両社にとってプラスの成長に返ってくるとみている。また、トヨタ自動車とは円筒形や角形を問わず、バッテリーの種類を超えて対応できるような関係が構築できているとしている。
電池メーカーと一緒に
駆動用バッテリーはトヨタ自動車を通じた調達を前提としていたが、自前でも調達するため、パナソニック エナジーとのパートナーシップ構築に向けた協議を始めた。米国で生産するEV向けの電池供給については、今後検討の中で議論していくという。
専務執行役員で経営企画本部長の江森朋晃氏は「バッテリーの品質や歩留まりの向上と十分な供給を実現するのは本当に大変なことだと見えてきた。『電池メーカーさん、よろしく』と任せるのではなく、自動車メーカーも一緒にやって乗り越えていかなければならないハードルがある。一緒にやっていきたいという思いを受け止めてくれたのがパナソニック エナジーだった。どこの電池メーカーも限られた人的リソースでニーズに対応している中、一緒にと言ってもらえることが大事だった」とコメントした。
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