EV向けのシンプルなモノづくり
本格的にEVシフトを進めるに当たって、開発プロセスと商品企画を併せて刷新し、モノづくり革新と価値づくりを推進する。
現在、製造と開発、サプライチェーンは分業している。ユーザーの嗜好の変化、技術の複雑化などに対応するため、個々の領域を専門化したり取引先に業務委託したりする取り組みが進んだためだ。今後はスバルの小回りが利く規模を生かし、これまで前工程の手離れを待ってから進めてきた業務に3者で連携して取り組む“高密度化”を目指す。
これにより、開発工数や部品点数、生産工程を半減させる。シンプルなモノづくりにすることが重要だという。生産工程を半減させる作り方によってEVでも利益を確保する。どのような作り方や構造が最適か、企画と設計が行き来しながら検討している。
価値づくりでは、EVの今後の市場動向が読みにくい中でもスバルらしさを失わず、ユーザーに刺さる商品を作ることを掲げる。AWD性能をはじめとする安心安全での強み、シームレスでストレスフリーな使い勝手の追求の他、クルマの魅力を減らさず長く使ってもらうための「減価ゼロ」などに取り組む。スバルは長く乗るユーザーが多いため、ソフトウェアアップデートで価値を下げないような提案をしていく。ハードウェアだけでなくソフトウェアでも価値を感じてもらうことを目指す。
米国では、ユーザーや販売店、地域社会がつながるチャリティーなどの取り組みに力を入れ、地域に根差したポジションを獲得してきた。ユーザーの人生に寄り添う存在であることに今後もこだわる。
モノづくり革新と価値づくりを推進する人材育成にも注力する。作る商品の変化に合わせて追加でスキルを身に付けてもらうことで、雇用を守る。
2023年4〜6月期決算は
スバルが同日に発表した2024年3月期第1四半期(2023年4〜6月期)の決算は、売上収益(売上高)が前年同期比29.7%増の1兆821億円、営業利益が同128.4%増の845億円、当期利益は同169.2%増の732億円で増収増益だった。2024年3月期通期(2023年度)の業績見通しは据え置いた。
2023年4〜6月期の生産台数は、半導体の供給不足の影響が残るものの計画通りに進捗して前年同期比3.8万台増(18.3%増)の24.3万台だった。連結販売台数は米国を中心に販売が堅調に推移し、同4万台増(20.3%増)の23.6万台に増加した。地域別に見ると北米が同19.4%増の17.9万台、日本が同2.7%増の2.1万台だった。米国以外ではカナダや豪州への出荷を増やした。
営業利益の増減要因を見ると、サプライヤーの負担軽減を含む原材料価格の上昇で262億円、販売台数の増加に伴う諸経費の増加で93億円といったマイナス要因があった。売上構成差などの改善で517億円、為替が円安で推移したことで341億円のプラス要因で全体としては前年同期から利益が増加した。
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