体質改善を進める自動車メーカーの前に、資材価格のかつてない高騰が立ちはだかる:自動車業界の1週間を振り返る(2/2 ページ)
土曜日ですね。1週間おつかれさまでした。昨日(5月13日)から、高齢ドライバー向けの実車試験の運用がスタートしました。運転免許を更新する75歳以上の人で、直近の3年間に信号無視や速度超過など一定の違反があった人に、実車試験が義務付けられます。免許の有効期間が終わるまでの6カ月の間に、実車試験を受けなければなりません。
決算資料では営業利益の増減要因に触れられていますが、それを見ると資材や原材料など製造にかかわるコストが2021年度から2022年度で大幅に増えていることが分かります。トヨタ自動車が毎年徹底した原価改善を続けているのは周知の通りですが、それを大幅に上回る資材高騰によって原価改善で利益を生み出すのが難しくなっています。トヨタ自動車は2022年度は3000億円の原価改善を進める計画ですが、資材高騰の影響は1兆4500億円を見込んでいます。足し引きして1兆1500億円の減益要因です。
他の材料に置き換えられないか、材料の使用量を減らせないか、各社とも検討を続ける方針ですが、飛び道具は簡単には出てきません。とはいえ、各社とも新車価格にコストを反映することには慎重です。原材料のコストが上がったから価格を上げるのではなく、ふさわしい付加価値を持たせた上で見合った価格にしたい……という思いが、決算会見に出席した経営陣からうかがえます。
2022年度 | 2021年度 | 2022年度 | ||||
---|---|---|---|---|---|---|
設備投資 | 研究開発費 | 資材コスト | 原価改善 | 資材コスト | 原価改善 | |
トヨタ | 14,000 | 11,300 | -6,400 | 2,800 | -14,500 | 3,000 |
4.2 | 0.5 | |||||
ホンダ | 5,000 | 8,400 | -2,700 | - | -3,000 | - |
79.6 | 4.5 | 569億円の減益 | 860億円の減益。△3000億円には輸送費や人件費も含む | |||
日産 | 4,400 | 5,500 | -1,392 | 276 | -2,570 | 3,000 |
27.5 | 13.6 | 「モノづくりパフォーマンス」 | 原材料費で△2120億円、物流費で△450億円 | 販売、生産併せた改善 | ||
スズキ | 2,900 | 2,000 | -1,283 | 292 | -850 | 350 |
53.1 | 24.4 | |||||
マツダ | 1,200 | 1,400 | -950 | - | -1,200 | - |
-16.8 | 4.0 | コスト改善含め594億円の減益 | 原材料と半導体で△900億円、物流コストで△300億円。原価改善加味して728億円の減益 | |||
スバル | 1,400 | 1,200 | -796 | 71 | -1,042 | 55 |
62.6 | 5.4 | |||||
三菱自 | 1,000 | 1,020 | -598 | 524 | -792 | 300 |
59.4 | 12.4 | さらに輸送費で△18億円 | 工場経費で△77億円、輸送費で△155億円 | |||
原価改善や資材コストは各社の営業利益の増減要因より抜粋。金額の単位は億円。設備投資と研究開発費の下段は前年度比で単位は%。 |
厳しい事業環境ではありますが、設備投資や研究開発費はゆるめません。ホンダは北米向けの新型車投入が続くことから前年度から8割増となります。2022年度の設備投資ではありませんが、SUBARU(スバル)は国内の生産体制の再編に2023年度から5年間で2500億円を投資すると発表しました。通常の投資に加えて、電動車の生産体制を整えるために投資を実施します。
決算会見ラッシュの中で印象的だったのは、ある自動車メーカーの経営陣の「半導体不足もコロナ禍と同じ」という発言です。先の読めない非常事態続きでも、その中でできることをやって活動していくしかない、というニュアンスを感じました。
今週はこんな記事を公開しました
- グリーンモビリティの本質
- 電動化
- 安全システム
- 製造マネジメントニュース
- 材料技術
- 車載ソフトウェア
- CAEニュース
- 電子ブックレット
- 編集後記
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