モータースポーツでのあなたの応援が、エンジンを生き残らせる?:自動車業界の1週間を振り返る(2/2 ページ)
土曜日です。1週間お疲れさまでした。今週は、ホンダがF1(フォーミュラ・ワン)で有終の美を飾ったというニュースから始まりました。F1最終戦であるアブダビグランプリにおいて、ホンダがパワーユニットを提供するRed Bull Racing Honda(レッドブル・レーシング・ホンダ)のマックス・フェルスタッペン選手が優勝し、ドライバーズチャンピオンを獲得したのです。
自動運転車ほどは歓迎されていないようにみえるのが、電動化です。トヨタ自動車が説明会を開き、これまでに公表した電動車の展開計画を上方修正し、2030年までにEV30車種を展開するとともに同年のEVの販売台数を350万台とする目標を発表しました。
トヨタ自動車はEVの展開について、2017年にはEVとFCV(燃料電池車)で100万台、2021年5月にEVとFCVで200万台と説明してきましたが、1年もたたないうちにEVのみで350万台と目標を引き上げたのです。社長の豊田章男氏は「COP26(国連気候変動枠組条約第26回締約国会議)があり、各国のエネルギー政策が見えてきた段階において、この目線までであれば実現可能だと考え、上方修正した」と説明しています。
豊田氏は、EVのみにシフトすることが雇用にも大きな影響を与える、とこれまで発信してきました。日本の新車がEVのみになると、自動車関連で働く550万人の雇用のうち100万人分が失われると訴えてきました。今回発表した目標は、2050年のカーボンニュートラル達成という長期的なゴールよりも“近場”の数字を示すことで、電動化と雇用の両立に向けた議論を進める狙いがあるようです。
自動車業界の雇用を守る手段の1つとして水素エンジンや、エンジンでのカーボンニュートラル燃料の使用に注目が集まっていますが、それほどの大役を担えるわけではなさそうです。
トヨタ自動車の説明会の中で、CTOの前田昌彦氏は「悪いのはエンジンではなく炭素である。燃料を燃やしたときに炭素が出ずにエンジンを生かせるのであれば、いくつかのお客さまに提供できる利便性があり、それを諦めたくない」とコメントしました。トヨタ自動車が公開している説明会の動画を見ていただくと、決してメインストリームに出てくるというニュアンスではないのがお分かりいただけるかと思います。いち早く“脱エンジン”を宣言したホンダも、カーボンニュートラル燃料を使ったエンジンは限られたユーザーや市場に向けたものになると見込んでいますね。
いつまでもエンジン車に乗り続けたいと心から思う方、水素エンジンが端パイになってはいけないと思う方は、2022年のモータースポーツを応援しましょう。全日本スーパーフォーミュラ選手権やスーパー耐久シリーズで、カーボンニュートラル燃料の活用が始まります。カーボンニュートラル燃料で走るエンジン車に対する応援の声が大きくなればなるほど、モータースポーツを通して開発し続ける意義が生まれ、いずれ市販車に技術が降りてくる可能性も高まります。
クルマとカーボンニュートラルは楽しいのだとモータースポーツが示していけると、前向きでいいですよね。「走る実験室」の面目躍如です。
今週はこんな記事を公開しました
- いまさら聞けない自動車業界用語
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