EVのみだと2035年までに雇用が50万人減少、欧州自動車部品工業会が試算:電気自動車
CLEPA(欧州自動車部品工業会)は2021年12月6日、EV(電気自動車)のみに移行する規制が自動車部品産業の雇用に与える影響に関する調査結果を発表した。
CLEPA(欧州自動車部品工業会)は2021年12月6日、EV(電気自動車)のみに移行する規制が自動車部品産業の雇用に与える影響に関する調査結果を発表した。
2035年までに内燃機関の技術が段階的に廃止された場合、内燃機関の部品の生産に関わる50万人の雇用が失われるという。このうち70%の約36万人が2030〜2035年の5年間で仕事を失う可能性が高く、影響に対応するための時間は限られていると指摘した。
EU域内でのバッテリーの生産も含めると、EVシフトによって22万6000人の新規雇用が生まれるが、自動車部品産業の雇用全体としては足元から2040年までの間に27万5000人の純減(43%減)となる見通しだ。
電動パワートレインに関する価値創出のうち、70%を占める最大700億ユーロが、電池材料の加工、電池セルやモジュールの製造、電池システムの組み立てに関連すると見込む。ただ、内燃機関が事業の中心である中小企業には参入が難しく、バッテリー関連にビジネスをシフトする機会を得るのは難しいという。また、人材のニーズも異なり、機械部品に関連した人材の雇用は少ないと指摘した。
電動化だけでなく、代替燃料など複数のアプローチを取り入れれば、雇用を維持しながら付加価値を生み出すことができ、CO2排出量は2030年までに半減できるとしている。
CLEPAとともに調査を行ったPwC Strategy& GermanyのHenning Rennert氏は「ソフトウェアやインフラなどの分野で労働力やスキルが求められるが、将来的なパワートレイン技術の付加価値や雇用の創出は欧州での電池生産にかかっている」とコメントしている。ただ、EUでの大規模なバッテリーサプライチェーンの構築の時期は不確実であるという。
調査は、「電動化だけでなく代替燃料も活用してEVのシェアが50%の場合」「欧州委員会が提案する気候変動対策案(Fit for 55)が実行されてEVのシェアが80%に達する場合」「より急進的なEV導入によってEVのシェアが100%近い場合」の3つのシナリオに沿って、雇用への影響を分析した。電動化だけでなく代替燃料も活用した場合、雇用は2020年時点よりも増加し、2040年まで高い水準で維持されると見込む。
雇用の推移の見通し。ピンク色の棒グラフが「電動化だけでなく代替燃料も活用してEVのシェアが50%の場合」、紺色の棒グラフが「欧州委員会が提案する気候変動対策案(Fit for 55)が実行されてEVのシェアが80%に達する場合」、青色の棒グラフが「より急進的なEV導入によってEVのシェアが100%近い場合」の雇用を示している[クリックで拡大] 出所:CLEPA
欧州全体だけでなく、自動車部品の主要生産国であるドイツやスペイン、フランス、イタリア、チェコ、ポーランド、ルーマニアでの影響も検証。西欧諸国はEVのパワートレイン生産に適しているとした一方で、中欧・東欧は内燃機関への依存度が高いままであると指摘した。
サプライヤーは自動車メーカーと比べて経営面で機敏な対応が難しく、資本力のない中堅企業や中小企業はEVシフトの急激な進展の中で従業員の学び直しや新たなイノベーションの創出、雇用の維持への投資で影響を大きく受けやすいと言及した。
CLEPAの事務局長でジャーナリスト出身のSigrid de Vries氏は「EU加盟13カ国でみると、サプライヤーでの雇用が自動車製造業の雇用の60%以上を占める。製造業としてみてもサプライヤーが多くの雇用を担っていることから、変革に伴う社会的、経済的な影響に対策する際にはサプライヤーの雇用を最優先に考えることが重要だ」とサプライヤーへの支援を優先するよう訴えた。
ただ、CLEPAとして電動化に反対しているわけではなく、「電動モビリティは排出削減の目標を達成する上で不可欠な手段となっているが、社会のニーズは多様で一律のアプローチで対応するのは難しい。ハイブリッドシステム、水素、代替燃料など、利用可能な全てのソリューションに開かれた規制の枠組みだからこそ、今後数十年でモビリティを再定義するイノベーションが可能になる」ともコメントしている。
CLEPAは、欧州委員会が提案する気候変動対策案(Fit for 55)が自動車の生産や走行に使用するエネルギーに関する排出量を考慮していないと主張する。動力源となる燃料や、電力の発電方法も考慮してCO2排出基準への適合性を評価すべきだと訴えている。
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