EVだけではカーボンニュートラルではない、BMWが訴える「循環型経済」の意義:自動車業界の1週間を振り返る(1/2 ページ)
1週間おつかれさまでした。土曜日ですね。今週はドイツ・ミュンヘンで国際モーターショー「IAA MOBILITY 2021」が開幕しました。ドイツの乗用車のモーターショーといえばフランクフルトが開催地でしたが、ミュンヘンに場所を移して開催となりました。残念ながら現地には行けませんでしたが、電動化が展示の一大トレンドだったようです。
1週間おつかれさまでした。土曜日ですね。今週はドイツ・ミュンヘンで国際モーターショー「IAA MOBILITY 2021」が開幕しました。ドイツの乗用車のモーターショーといえばフランクフルトが開催地でしたが、ミュンヘンに場所を移して開催となりました。残念ながら現地には行けませんでしたが、電動化が展示の一大トレンドだったようです。
プレスリリースなどインターネット上で公開された資料を見ていて気になったのは、BMWです。サーキュラーエコノミー(循環型経済)を重視する姿勢をコンセプトカーで示したことが、大変興味深いです。BMWは電動化だけでなく、サーキュラーエコノミーにも取り組むことでCO2排出を削減する方針です。
材料の有効活用に特化したコンセプトカーを披露
IAAに関するBMWのプレスリリースには「EV(電気自動車)の台数を増やすことだけが気候変動に配慮したモビリティの実現方法ではない」とし、新規に生産した材料の使用量を減らす他、環境負荷の高い資源の開発や、CO2排出量の多い加工を減らすことが重要だと述べています。現在、BMWにおけるリサイクル素材や再利用可能な材料の使用比率は30%ですが、「セカンダリーファースト」というアプローチでこの比率を50%まで増やすとしています。
この考えを表現したコンセプトカーが「i Vision Circular」です。車両に使用する素材を全て再生材料かリサイクル可能な材料とする前提で設計します。バイオベースの材料や認証を受けた原料なども使用します。さらに、駆動用バッテリーとして搭載する「solid-state battery」も、100%リサイクル可能で、ほとんどを再生素材で構成すると紹介しています。これが固体電池なのか全固体電池なのかは不明ですが、貴重な資源の使用を抑えながら、高いエネルギー密度を達成するとしています。
このコンセプトカーに取り入れたアイデアは、量産車で実行するにはかなりチャレンジングなのだろうと思います。ただ、BMWはライフサイクル全体のCO2排出量を車両1台当たり40%削減する、という2030年までの目標を立てており、そのためには車両に使う材料から取り組むべきだという姿勢がうかがえます。
BMWはEVの「i3」でも環境を意識した素材を積極的に採用した実績がありますので、昨日今日で決めた方針ではないように思われます。しかしi3には、リチウムイオン電池や、軽量化のためのCFRP(炭素繊維強化プラスチック)製の車体といったリサイクルのハードルが高い部品も使われています。今回のコンセプトカーではリサイクル可能な材料から成る駆動用バッテリーにも言及されていますが、CFRPについてはどう考えているのでしょうか。
リサイクルできないから使うのをやめるという判断でもいいのですが、CFRPを使い続けられる道を模索してほしいですね。こうした難易度の高いリサイクルへのBMWの本気度にも注目したいと思います。
トヨタの全固体電池のニュース、どう受け止めましたか
本気度といえば、今週さまざまな意見を呼んだのが、トヨタ自動車のバッテリー戦略ですね(関連記事:実車で走って分かった全固体電池の課題は「寿命の短さ」、EVよりもHEV向き?)。トヨタ自動車は2030年に向けた電動車の販売比率を上方修正しており、それに合わせた生産と開発への投資や取り組み方針を今週説明しました。
この発表に対して、「トヨタらしい」「これは横綱相撲の構え」と好意的に評価する反応があった一方で、「全固体電池はゲームチェンジャーだと言っていたのに、使うのはHEV(ハイブリッド車)なのか」「いま低寿命が判明して、他社に勝てるのか」というように落胆したような声も見かけました。
確かに、「全固体電池は寿命が短いという課題がある」と明言されたのは、説明会を見ていた私も驚きました。しかし、これはトヨタの技術の問題ではなく、全固体電池の仕組み上どうしても生じる課題です。「思ったほど全固体電池がよくないからEVじゃなくてHEVで使おうとしている」と考える人がいなければよいのですが……。課題はあるけれども量産車で搭載する計画があるということは、寿命の短さを解決する手応えがあるのだろうと期待したくなりますね。望み薄ならこうした公の場で言及せず、少しずつ存在感を消していくはずですから。
全固体電池の高出力な特性も昨日今日で判明したものではなく、以前から期待されていた性能です。高出力なバッテリーを使うことでクルマの走りが変わることはバイポーラ型ニッケル水素電池を初採用した「アクア」で証明済みであり、その流れでHEVに高出力な全固体電池が合うと判断するのは自然です(さらに出力がアップするとHEVはどう変わるのでしょうか?)。さらに、HEVでもEVでも全固体電池が搭載されれば、量産効果の面でもメリットは大きいでしょう。
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