“現実的価値”を生むスマート工場化が拡大、ロボット活用も標準化も進んだ2019年:FA 年間ランキング2019(3/3 ページ)
2019年に公開したMONOist FAフォーラムの記事をランキング形式で振り返ります。公開記事の1年間分のデータを集計した上位記事とそこから見えるFA業界の状況について紹介します。
4位以下の記事では「ローカル5G」に注目
4位以下の記事で、触れておきたいのは「ローカル5G」についての記事です。「工場への5G導入でファナックと日立が組む理由、完全無線通信化も視野に」などの他、15位にも「工場5Gは本当に使える? DMG森精機が伊賀事業所で今秋から実証開始」などがランクインしています。
5Gは、最大10Gbpsの高速通信、1ms以下の低遅延、1km2当たり100万台の多数同時接続などの特徴を持つとされ、2020年から商用サービスが開始されます。通信キャリアが提供する「公衆5G」の一方で、通信キャリア以外の事業者が、独自の基地局を設置して5Gを活用する「ローカル5G」が新たに認められているために、これを工場内通信に活用するための検討が進んでいます。
工場内の通信で5Gのこれらの性能や機能を活用できるようになると、工場内のさまざまな配線が不要になる可能性があります。また、スマート工場化の流れの中で、現場のデータ取得のためにさまざまなセンサーを付けるのではなく、リアルタイムで高精細画像を撮影し、その画像分析でさまざまな認識を行うようなことも可能になるのではないかと考えられています。ただ、現実的にはそう簡単ではありません。5Gの電波は直進性が強いために安定性が課題だとされており、産業レベルで活用するためには新たな関連技術の開発が必要となります。現在は世界的に見ても「どういう領域なら使用できるか」「難しい場合はどういう技術開発が必要か」などの観点で実証が進められている状況で、2020年もさまざまな動きが出てくると見ています。
2019年の総合トップは?
さて、ここまで2019年公開記事に限定してランキングを見てきましたが、MONOist FAフォーラムの過去の記事も含めた全ての記事の中で2019年に最も読まれた記事は何だったのでしょうか。
答えは「半導体露光機で日系メーカーはなぜASMLに敗れたのか」となります。この記事は2018年公開記事の中で年間1位となった記事なのですが、半導体業界の再編などが進む中で、2019年も読まれ続けました。
ちなみに2位には「いまさら聞けない EtherCAT入門」」が入りました。こちらは2016年、2017年、2018年と3年連続で年間トップとなった記事ですが、2016年のトヨタ自動車の採用発表(※)以降、継続的に高い関心が続いているといえます。
(※)関連記事:トヨタが工場内ネットワークでEtherCATを全面採用、サプライヤーにも対応要請
2019年総合でのランキングは以下のようになります。
MONOistFA2019年記事総合ランキングトップ10
さて、2019年は従来語られてきたスマート工場化などの価値が実際に手の届くところに来た1年であったように感じています。一方で5Gなど新たな技術への検討が始まったといえるでしょう。2020年はどのような1年になるでしょうか。MONOistでは2020年も引き続き、スマート工場を含む製造現場の将来像についてさまざまな角度で情報発信を続けていきます。引き続きよろしくお願いいたします。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
- ソニーから譲り受けた村田のリチウムイオン電池、「燃えない」を武器に黒字化急ぐ
村田製作所は2019年8月28日、リチウムイオン電池の組み立て工程を担う東北村田製作所の郡山事業所を報道向けに公開した。 - 工場自動化のホワイトスペースを狙え、主戦場は「搬送」と「検査」か
労働力不足が加速する中、人手がかかる作業を低減し省力化を目的とした「自動化」への関心が高まっている。製造現場では以前から「自動化」が進んでいるが、2019年は従来の空白地域の自動化が大きく加速する見込みだ。具体的には「搬送」と「検査」の自動化が広がる。 - 工作機械の共通インタフェース「umati」とは何か?
工作機械のスマート化に向けて注目されている通信規格が「umati」である。本連載では「umati」とはどういう規格なのか、技術的にはどういう背景があるのか、どのような活用シーンがあるのかについて、紹介する。第1回となる今回は「umati」とは何かをテーマに概要を取り上げる。 - 「OPC UA」とは何か
スマート工場化や産業用IoTなどの流れの中で大きな注目を集めるようになった通信規格が「OPC UA」です。「OPC UA」はなぜ、産業用IoTに最適な通信規格だとされているのでしょうか。本連載では「OPC UA」の最新技術動向についてお伝えする。第1回である今回は、あらためて「OPC UA」の概要と位置付けを紹介する。 - 自律するスマート工場実現に向け、IoTプラットフォーム連携が加速へ
製造業のIoT活用はスマート工場実現に向けた取り組みが活発化している。多くの企業が「見える化」には取り組むが、その先に進むために必要なIoT基盤などではさまざまなサービスが乱立しており、迷うケースも多い。ただ、これらのプラットフォームは今後、連携が進む見込みだ。