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工場への5G導入でファナックと日立が組む理由、完全無線通信化も視野にスマートファクトリー(1/2 ページ)

ファナック、日立製作所、NTTドコモは、5Gを活用した製造現場の高度化に向けた共同検討を開始することで合意した。ファナックは本社工場、日立は大みか事業所で、5Gの電波伝搬測定と伝送実験を順次開始する。現在、工場やプラント内の通信ネットワークは基本的に有線でつながっているが、これらを完全無線通信化することも視野に入れている。

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 ファナック、日立製作所(以下、日立)、NTTドコモは2019年9月2日、次世代移動通信方式の5Gを活用した製造現場の高度化に向けた共同検討を開始することで合意したと発表した。ファナックは本社工場(山梨県忍野村)、日立は大みか事業所(茨城県日立市)で、5Gの電波伝搬測定と伝送実験を順次開始する。今後は、2021年夏までをめどに、工場およびプラントでの生産制御システムに必要な高信頼ネットワークにおける5Gの活用検証を進める。現在、工場やプラント内の通信ネットワークは基本的に有線でつながっているが、これらを完全無線通信化することも視野に入れた取り組みとなる。

工場の5G活用で先駆ける

 米国や韓国などでサービスが始まった5Gは、高速・大容量、低遅延、多数の端末との接続を特徴としている。その一方で、工場やプラントなどの製造現場で用いられるネットワーク環境は、リアルタイム性と安定性が求められることもあり、有線でつなげるのが一般的だった。ただし5Gの場合、低遅延と多数の端末との接続という特徴により、製造現場で求められるリアルタイム性と安定性を満たすことができる。さらに、高速・大容量の特徴により、AI(人工知能)の活用が進む映像データの取り扱いも用意になるため、5Gの有力なアプリケーションとしてスマート工場が挙げられることが多い。

 ただし、5Gの特徴の1つである多数の端末との接続に関する規格策定は未定の部分が多いこともあり、スマート工場への5Gの本格的な導入は2023年以降になるとみられている。その中で今回の3社の発表は、実証実験ベースではあるものの完全無線通信化までをも視野に入れており、工場やプラントにおける5G活用で先駆けたい思いが強くにじんでいる。

ファナックの自動化ライン、日立の多能工化ラインで実証実験

 工場やプラントにおける5G活用という観点では、ファナックとNTTドコモ、日立とNTTドコモという形で、それぞれの取り組みが分離した構成でも問題はないはずだ。ただし、今回の取り組みが3社の枠組みとなっているのは、ファナックと日立で連携する計画があるからだ。

 ファナックは、自社工場において、産業機器(CNC装置、産業用ロボット、工作機械、センサーなど)との5G接続および無線制御の検証を行う。一方の日立は、大みか事業所において、制御ネットワークへの適用性検討や高精細映像のリアルタイム共有などによる遠隔保守作業支援の検証を行う。

ファナックの本社工場の外観
ファナックの本社工場の外観 出典:ファナック

 ファナックが自社工場で生産しているのは、5G接続の検証も行われる各種産業機器であり、民生用機器ほどではないものの比較的量産規模が大きく、ロボットなどを活用した生産ラインの自動化も進んでいる。これに対して、日立が大みか事業所は、鉄道や発電所の制御システムといったほぼ一品物に近い多品種少量生産を行っている。その特徴は、ファナックの自動化ラインとは異なり、作業者がさまざまな役割を担う多能工化ラインだ。両社とも組立工場ではあるものの、生産手法の特性に合わせて5G活用の方向性も異なってくる。

日立 大みか事業所の制御装置生産ライン
日立 大みか事業所の制御装置生産ライン 出典:日立製作所

 ファナックと日立は、互いの工場で得られる知見やノウハウを共有、議論するための場を用意する方針で、そこから工場における5G活用の知見をさらに積み重ねていきたい考えだ。

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