工場への5G導入でファナックと日立が組む理由、完全無線通信化も視野に:スマートファクトリー(2/2 ページ)
ファナック、日立製作所、NTTドコモは、5Gを活用した製造現場の高度化に向けた共同検討を開始することで合意した。ファナックは本社工場、日立は大みか事業所で、5Gの電波伝搬測定と伝送実験を順次開始する。現在、工場やプラント内の通信ネットワークは基本的に有線でつながっているが、これらを完全無線通信化することも視野に入れている。
5GとIoTプラットフォームを組み合わせたスマート工場ソリューションも
また、両社がそれぞれ展開するIoT(モノのインターネット)プラットフォームでも相互に補完し合える関係性があることも、今回の取り組みの背景にあるとみられる。ファナックが展開する「FIELD System」は、IoTの枠組みの中でエッジとなる工場側を重視したプラットフォームになっている。日立の「Lumada」は、自社工場の技術に基づくOT(制御技術)と、ITソリューションベンダーとしての長年の実績を基にしたITの両方を強みとしている。
自社工場への5G導入の実績は、将来的には、そのノウハウなどをIoTプラットフォームと組み合わせてスマート工場ソリューションとして外販することになる。両社は、IoTプラットフォームについても得意分野が異なることもあって、5GとIoTプラットフォームを組み合わせたスマート工場ソリューションの開発でも競合しない可能性が高い。
NTTドコモにとっても、ファナックと日立という業界を代表する製造業と組むことで、製造現場における5G活用で競合に対して先行したい考えだ。3社の取り組みの発表と同日に、工場自動化など産業向けユースケースへの5G技術の活用を検討するグローバルなアライアンスである「5G-ACIA(5G Alliance for Connected Industries and Automation)」への加入を発表したことも、その考えを裏付けている。
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