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5Gはスマートフォンだけじゃない、クアルコム「全てをつなげるものだ」組み込み開発ニュース

クアルコム ジャパンは、クアルコム(Qualcomm)が展開する次世代通信技術の5G関連事業について説明。「導入が始まった5Gだが、2035年までに12兆3000億米ドルもの経済インパクトがあるという調査もある。この数字が正しいかとはともかく、5Gが非常に大きな影響を与えることだけは確かだ」(同社)。

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Qualcomm Technologiesのドゥルガ・マラーディ氏
Qualcomm Technologiesのドゥルガ・マラーディ氏

 クアルコム ジャパンは2019年5月24日、東京都内で会見を開き、クアルコム(Qualcomm)が展開する次世代通信技術の5G関連事業について説明した。同社技術開発部門のQualcomm Technologiesで4G/5G担当のシニアバイスプレジデント兼ゼネラルマネジャーを務めるドゥルガ・マラーディ(Durga Malladi)氏は「導入が始まった5Gだが、2035年までに12兆3000億米ドル(約13兆4600億円)もの経済インパクトがあるという調査もある。この数字が正しいかとはともかく、5Gが非常に大きな影響を与えることだけは確かだ」と語る。

 2018年後半から世界各地で導入が始まった5Gだが、2019年の現時点ではスマートフォンの通信の高速化となる「モバイルブロードバンド」が焦点になっている。マラーディ氏は「スマートフォンの通信速度は、現行の4Gでも既にGbpsレベルを実現できているのに、なぜ5Gが必要なのかと聞かれることがある。答えは簡単で、ユーザー体験が大幅に向上できるからだ。平均スループットは圧倒的に5Gの方が高く、4Kのストリーミング映像を視聴する場合でも、5Gであればほとんどの場面で最高のビットレートを適用できる。そして何より、限られた無線通信帯域の中で通信容量を高められるので、データ転送量当たりの通信コストを低減される。つまり通信料を安くできるということだ」と説明する。

5Gは、4Gよりもスマートフォンのユーザー体験を大幅に向上できる
5Gは、4Gよりもスマートフォンのユーザー体験を大幅に向上できる(クリックで拡大) 出典:クアルコム ジャパン

 5Gでは、24GHz以上のミリ波帯、1G〜6GHzのミッドバンド、1GHz以下のローバンドなど複数の電波周波数帯を活用することになっている。ミリ波帯は先述したモバイルブロードバンドや、企業などがプライベートネットワークとして利用するローカル5Gなどに適している。ミッドバンドは通信速度と通信範囲のバランスが取れており、ローバンドは通信範囲の広さが特徴になる。ミリ波帯の通信はモバイルブロードバンドに適用するのが難しいのではないかという指摘もあったが、「課題を解決するために、これまでクアルコムは全力で取り組んできた。実際に、現在発売されている5G対応のスマートフォンは、ミリ波帯の通信に対応している」(マラーディ氏)という。

 製品ラインアップとしても、5G対応のモデムチップとなる「Snapdragon X50」やミリ波アンテナモジュールの「QTM052」、これらを組み合わせたレファレンスデザインを展開。これまでに75機種以上の5G対応端末が発売もしくは開発中となっている。

スマート工場の産業用IoTは5Gの特徴を全て生かせる

 2019年内にプレサービスが始まる日本国内を含めて、5Gの用途はしばらくスマートフォン向けのモバイルブロードバンドがメインになる。ただし、マラーディ氏が「5Gはスマートフォンだけではない。全てをつなげるものだ」と話す通り、さまざまな用途への広がりが想定されている。だからこそ、2035年までに12兆3000億米ドルの経済インパクトが生まれるわけだ。

 まずマラーディ氏が挙げたのが、オフィス内をはじめとする室内ネットワークとしての活用である。クアルコム社内における実証実験で、オフィス内のWi-Fiアクセスポイントと併設する形でミリ波対応の5Gの小型基地局を設置した結果、5Gbpsのダウンリンクを構築するなど、超高速の無線通信網を構築できたという。「ここまで速ければクラウドがローカルにあるかのように使える」(同氏)という。

クアルコム社内での実証実験結果
クアルコム社内での実証実験結果。小型5G基地局をWi-Fiアクセスポイントと併設することで、5Gbpsのダウンリンクなど超高速の無線通信網を構築できた(クリックで拡大) 出典:クアルコム ジャパン

 この高速の通信により、VR(仮想現実)やAR(拡張現実)などのHMD(ヘッドマウンドディスプレイ)を小型化できる可能性がある。マラーディ氏は「画像処理はエッジサーバなどで行い、HMDが表示帰納だけを担うのであれば、大幅な小型化が可能になる」と説明する。

 そして、高速通信だけでなく、低遅延と多接続という5Gの特徴を生かせるのがスマート工場をはじめとする産業用IoT(モノのインターネット)だ。工場内で用いられるAR用のHMDは高速通信が必要だが、ロボット制御の通信ではミリ秒以下の低遅延が求められる。装置や設備に組み込まれるセンサーは膨大な数になるが、これら多数の通信ノードは1つの基地局でカバーしたい。「これらの需要を確かめるため、ドイツの大手自動車メーカーと5Gを用いた産業用IoTの実証実験を進めているところだ」(マラーディ氏)。また、自動運転車に必要不可欠なV2X(Vehicle to X)技術デモ5Gは重要な役割を果たす見込みだ。

産業用IoTでつながるデバイスの数々通信の要件 スマート工場などの産業用IoTでつながるデバイスの数々(左)とそれらに求められる通信の要件(右)。5Gであればそれらの要件を満たせる(クリックで拡大) 出典:クアルコム ジャパン

 ただし、5Gの規格策定は、モバイルブロードバントの領域が先行して進められており、産業用IoTに必要な多接続、産業用IoTとともに自動運転車にも必要な低遅延については、今後議論が深まっていくことになる。マラーディ氏は「5Gのトライアルはさまざまな分野で進んでおり、パートナーの関心も非常に大きい。モバイルブロードバンドについても、立ち上げはこれからであり、今後の市場拡大に大きく期待が持てるだろう」と述べている。

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