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「MWC 2019」で見えた5Gとクルマの現在地次世代モビリティの行方(4)(1/3 ページ)

これまでスタンドアロンな存在だった自動車は、自動運転技術の導入や通信技術でつながることによって新たな「次世代モビリティ」となりつつある。本連載では、主要な海外イベントを通して、次世代モビリティの行方を探っていく。第4回は、「MWC 2019」で注目を集めた「5G」と、そのユースケースの筆頭とされる「クルマ」の関係性をレポートする。

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 2019年2月25〜28日にかけて、スペインのバルセロナで移動体通信事業者の業界団体GSMAが主催する「MWC Barcelona 2019(以下、MWC 2019)」が開催された。2018年まで、カンファンレンスの正式名称は「Mobile World Congress」だったが、2019年からは略称との「MWC」が正式名称となる。その背景にあるのが「IoT(モノのインターネット)」、そして「5G」だ。

 IoTは言うまでもなくありとあらゆるものが通信機能を備え、インターネットに接続するようになるというものだ。一方、「大容量・超高速通信(eMBB)」「大量マシンタイプ通信(mMTC・多数同時接続)」「超高信頼性・低遅延通信(URLLC)」を特徴とする次世代通信規格である5Gは、IoTに最適化された通信回線になるとみられている。これまで携帯電話機やスマートフォン向けに最適化されてきたモバイル通信だったが、5Gは水道メータや街灯から病院やドローンまで、あらゆるモノに搭載されることが想定されている。通信回線が社会インフラ化する中で、従来の電話をイメージさせる「Mobile」という言葉が、これからの通信の利用にそぐわないというのが理由のようだ。

5Gの特徴
5Gの特徴。「大容量・超高速通信(eMBB)」「大量マシンタイプ通信(mMTC・多数同時接続)」「超高信頼性・低遅延通信(URLLC)」により、さまざまな用途での活用が期待されている。自動車はその筆頭といえる(クリックで拡大) 出典:ITUの資料を基に情報技術総合研究所で作成

 2018年2月開催の平昌冬季オリンピック・パラリンピックに始まり、同年10月には米国通信事業者であるベライゾン(Verizon)が固定無線アクセス「5G Home」を、12月には同じく米国のAT&Tが「5G+」のを一部エリアでの商用化を開始した。これらのこともあって、5Gの商用化が着々と進んでいるという印象を受ける方もいるだろう。

 一方で、あるアナリストによる今回のMWC 2019についての表現が事態の本質を捉えているのではないかと筆者は考えている。その表現とは「5G is everywhere but 5G is nowhere」というものだ。

 おそらく、これは筆者だけが感じていたことではなく、実際にMWC 2019に参加した方の多くが同じ印象を持ったのではないだろうか。つまり、上述のように5Gの商用化が進んでいることから新しいユースケースなどが見られるのではないか、と期待して参加したにもかかわらず、残念ながら真の意味での目新しいユースケースを見ることができなかったと感じた人が多かったのではないかと推察される。また、5G対応デバイスも、スマートフォンやモバイルWi-Fiルーターなお、従来型の通信デバイスのみであり、これまでの延長という感が否めない。

 しかし、実際のところ、上述の5Gの特徴で言えば「大容量・超高速通信」が具現化された段階であり、これまで5Gのユースケースとして提案されていたドローンやロボット、医療など「超低遅延」を必要とするものについてはまだ「これから」なのである。また、どんな小さな安価なものにでも通信機能が搭載されありとあらゆるものがインターネットにつながる「多数同時接続」についても同様だ。

 これらのユースケースは長年議論されている印象を受けるが、まだPoC(概念実証)の段階で本格的なソリューションが登場しているわけではない。そういった意味では、5GはMWC 2019のどこにでもあるがどこにもないといった、ある種禅問答のような印象を受けるのは仕方がないことなのだ。

 この感覚は、5Gのユースケースの筆頭として取り上げられてきた自動車においても同様だ。各社のブースには自動車が展示されていたものの、一時期のハイプは落ち着いた印象だ。また、そこで展示されているソリューションも、5Gに直接関係するものは少なく、これまで提案されていたものと比較して大きく進展した印象はない。

 自動車関連では特にそれだけの時間がかかるということだろう。ただし、事故防止や自動車の安全性の向上に寄与すると考えられているC-V2X通信については、各国で対応も方針も異なる一方で期待度も高いことから、MWC 2019でも引き続き議論が繰り広げられていた。

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