工作機械の共通インタフェース「umati」とは何か?:いまさら聞けないumati入門(1)(1/5 ページ)
工作機械のスマート化に向けて注目されている通信規格が「umati」である。本連載では「umati」とはどういう規格なのか、技術的にはどういう背景があるのか、どのような活用シーンがあるのかについて、紹介する。第1回となる今回は「umati」とは何かをテーマに概要を取り上げる。
工作機械のスマート化に向けて「umati(ユマーティ)」というキーワードがにわかに業界で注目を集めている。本連載では「umati」とはどういう規格なのか、技術的にはどういう背景があるのか、どのような活用シーンがあるのかについて、紹介する。第1回となる今回は「umati」とは何かをテーマに概要を取り上げる。
ドイツが推進する「umati」
図1 umatiのロゴ(出典:VDW、https://vdw.de/en/technology-and-standardisation/umati-universal-machine-tool-interface/)
「umati」とは「universal machine tool interface」の頭文字をとったもので、その名の通り「工作機械がネットワークを介してシステムと接続しデータ交換をするための共通のインタフェース規格」のことである(図1)。VDW(ドイツ工作機械工業会)が主体となり、多くの工作機械メーカーや制御装置メーカーが参画してその規格化に取り組んでいる。2019年9月の時点で既にumatiのドラフト版が何度か改定されるところまで議論は進んで来ており、正式版のリリース準備に入っている段階だ。
そもそも従来の工作機械は作業者が操作して部品を加工するだけのものであった。その後、より生産性を向上させるためにCNCにより機械加工が自動化されたり、ソフトウェアにより稼働監視が可能となったり、数値制御化されて外部のシステムとも連携できたりするように進化を遂げてきた。しかし、工作機械がシステムと接続して稼働監視を行う方法を、それぞれのメーカーが独自に開発を進めてきたため、メーカーごとに専用の接続方式やデータフォーマットが乱立しているのが現状だ。
例えば、複数メーカーの工作機械を導入している金型工場の稼働監視を実現するためには、それぞれの機械メーカーの接続方式やデータフォーマットに対応した通信ソフトを開発しなければならない。こうした「さまざまな通信規格をつなぐ」ことがスマートファクトリー実現に対する大きな障害となっている。
もしさまざまな工作機械がシステムに接続する方法が共通化されれば、個別に通信ソフトを開発しなくてもつながる工場を簡単に実現できる。こういった世界を目指したインタフェース規格がまさにumatiである(図2)。
図2 umatiの概要イメージ図(出典:VDW掲載図を基に筆者が作成、https://vdw.de/en/technology-and-standardisation/umati-universal-machine-tool-interface/)
図2の中で一番下にある「Machines」は工場内にあるさまざまな工作機械を示している。一方で、「Systems」はERP(統合基幹業務システム)やMES(製造実行システム)などの企業内システムを示している。「Infrastructure」は、クラウドデータベースやクラウドサービスを示している。umatiは、この機械とシステムの接続方式とデータフォーマットを定めており、接続を可能としたものである。
もし工場内にある全ての工作機械がumatiに対応していれば、同じくumatiに対応した生産管理システムを採用することで、全ての機械を監視することが可能となる。多大な投資を抑えて、生産を自在にコントロールするといったスマートファクトリーを実現できるようになることだろう。
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