工作機械の共通インタフェース「umati」とは何か?:いまさら聞けないumati入門(1)(2/5 ページ)
工作機械のスマート化に向けて注目されている通信規格が「umati」である。本連載では「umati」とはどういう規格なのか、技術的にはどういう背景があるのか、どのような活用シーンがあるのかについて、紹介する。第1回となる今回は「umati」とは何かをテーマに概要を取り上げる。
umatiの規格づくりはEMO2017で開始
図3 umatiの議論が始まった時点での参加企業(団体)(出典:VDW、https://vdw.de/wp-content/uploads/2019/01/Flyer-umati-englisch-v2.pdf)(クリックで拡大)
ここ最近急速に注目を集めているumatiだが、その発端は2017年9月にドイツのハノーバーで開催された世界最大規模の国際工作機械見本市「EMO2017」である。VDWがドイツを中心とした工作機械メーカー、制御装置メーカーを集めて議論を開始したのだ。当時の参画団体が図3である。
機械メーカーとしてはDMG森精機やドイツのトルンプ(TRUMPF)、制御装置メーカーとしてはファナックやドイツのシーメンス(Siemens)など業界の中心となる企業が参加。筆者が所属するベッコフオートメーション(Beckhoff Automation)も初期からメンバーに加わっている。
ただ、これらの主要企業を集めながらも特定の企業に偏らない構成となっているのが特徴だ。そもそもの旗振り役がVDWである他、ドイツ国内の大学で最も大きな制御工学科を持つというISW(シュトゥットガルト大学)が実質的な取りまとめを務めている点など、活動の中立性が高く、規格の制定後に普及が進みそうだと感じられる体制となっている。
EMO2017での発表後で最初の大きな対外向けの発表となったのは、2018年9月にドイツのシュトゥットガルトで開催された国際金属加工見本市「AMB2018」の会場でのことである。参画企業が会場に展示したそれぞれの機械18台を、umatiの規格で定めた接続方式とデータフォーマットでシステムに接続するコンセプト展示を行った(図4)。
図4 AMB2018でのumatiコンセプト展示の内容(出典:VDW、https://vdw.de/wp-content/uploads/2019/01/Flyer-umati-englisch-v2.pdf)(クリックで拡大)
この展示発表を機に活動は一気に広がりを見せ始めた。VDWでは2019年2月に、umati JWG(umati Joint Working Group)を結成。多くの工作機械メーカー、制御装置メーカーが加入し、策定中のumati仕様を題材として、定期的に開催されるグローバルWebミーティングの中で意見交換が続けられている。そして、次の大きなターニングポイントとなりそうなのが、2019年9月16〜21日にドイツ・ハノーバーで開催予定のEMO2019である。ここでは展示会場にある100台を超える工作機械をumatiの規格に沿ってシステムに接続する大規模な企画展示を実現すべく準備が進められている。多くの日本の工作機械メーカーもこの展示に参加する見込みだ。
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