ArmのCSS for Mobile 2はPC向けの伏線!? Neoverse CSS N4はAGI CPUと競合せず:Arm最新動向報告(19)(1/3 ページ)

Armの最新動向について報告する本連載。今回は、2026年9月の「Arm Everywhere China」で発表された3つの新プロダクト「Arm CSS for Mobile 2」「Arm Total design for Physical AI」「Arm Neoverse CSS N4」について少し詳し目に紹介する。

» 2026年10月08日 08時00分 公開
[大原雄介,MONOist]

 Armは2026年9月8日、中国の上海でカンファレンス「Arm Everywhere China」を開催した。こちらの基調講演の様子はYouTubeで視聴できるが、ここでArmは3つの新発表を行った。具体的には「Arm CSS for Mobile 2(以下、CSS for Mobile 2)」と「Arm Total design for Physical AI(以下、Total design for Physical AI)」、そして「Arm Neoverse CSS N4(以下、Neoverse CSS N4)」となる。これらについて少し詳し目にご紹介したい。

⇒連載「Arm最新動向報告」バックナンバー

CSS for Mobile 2はクライアントではなくモバイル向け、Lumexはどこに?

 クライアント向けとしては、まず2024年5月にCSS for Clientが発表され、翌2025年9月にはこの後継としてArm Lumexというブランド(と新しいCSS)が発表された。しかし今回は、またもやブランド変更というか、Lumexはどこに消えた? という感じになっている。

 そもそもこれまでクライアント呼びしていたマーケットに対し、今回Mobile(モバイル)という用語を使ったということは、つまり今回のものはスマートフォン/タブレット端末程度までがターゲットで、これとは別にPC向けのラインアップが用意されるという伏線ではないかという気がするのだが、これは単なる筆者の臆測である。

 さてそのCSS for Mobile 2(図1)であるが、プロセッサはC2世代に進化した。

図1 図1 CPUクラスタ/GPU/システムインターコネクトが全て更新されている[クリックで拡大] 出所:Arm

 C2-Ultra/C2-Proがあることは今回明らかにされたが、C1世代にあったC1-Premium/C1-Nanoに相当するものが存在するかどうかは現時点では不明である。性能比較としては、C2-UltraはC1-Ultraと比較してシングルスレッド性能で15%、アプリケーション性能で12〜15%の向上とされている(図2)。

図2 図2 SME2ユニットを幾つ搭載できるか、はユーザーが決められるが最大で2つとのこと。ちなみにC2コアの処理性能はTDP1〜2Wの範囲で5〜7TOPS程度とのことだった[クリックで拡大] 出所:Arm

 また、AI性能に関しては70%増しとされているが、これはSME2ユニットを1つのクラスタ内に2つ搭載することが可能で、この場合に1.7倍になる、という話であった。もともとArm Lumexの世代で、SME2を使うことでAI性能を5倍にできるという説明だったから、つまりCSS for Client世代と比較すると8.5倍になる計算である。

 実際にこのSME2を利用した場合にAI性能がどこまで向上するのか? という比較が(図3)である。

図3 図3 この構成はSME2を2つ搭載した場合のものと思われる[クリックで拡大] 出所:Arm

 これはC1-Ultra×2、C2-Ultra×2およびC2-Ultra×2+SME2という3つの環境でローカルAI(人工知能)の推論を実施させた例である。C1-Ultraだと入力から回答までが1.9秒程要していたのが、C2-Ultraにすることで280ms減って1.6秒ほど。それにSME2を併用することで1.4秒ほどまで高速化できた、という結果である。グラフを見て頂くと分かるが、SME2が特に効果的なのはReason(Encode)、次がRememberの処理であり、Perceiveは多少効果がある程度。そしてReason(Decode)以降の処理はSME2の有無でほぼ差が無い。一番大きな処理時間を占めているのがReason(Decode)以降であることを考えると、SME2を使えば何でも高速化できるというわけではない。

 ちなみに、Armは現在SME2のエコシステムの構築に熱心であり(図4)、2026年9月28日にもTencent Hy TranslateがSME2を利用していることが明らかにされている(Armの公式Xのポスト)。

図4 図4 何となく中国系企業が非常に多いのが気になるところ[クリックで拡大] 出所:Arm

 SVE/SVE2の時と異なり、かなり積極的にArmの側から利用を促すような形でソフトウェアの普及を進めているというのは興味深い動きである。

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