MONOist AIから得たアイデアを、G-SHOCKクオリティーを備えた量産製品に落とし込む上で、どのような苦労や工夫がありましたか。
赤城氏 新しいアプローチなのでデザイナーにも苦労はありましたが、一番大変だったのは外装設計チームだったと思います(笑)。
通常も事前に相談はしますが、デザインをまとめてから設計にデータを渡し、本格的な設計を進めてもらいます。今回は、非常に有機的で特殊なデザインについて「これでG-SHOCKの耐衝撃性能が成立するのか」を確かめるため、かなり早い段階から設計チームにデータを渡していました。
先ほども述べた通り、設計者は強度や衝撃を解析し、「ここは強度が足りない」「この部分は構造を見直す必要がある」と結果を返してくれます。それを受けて、デザイナーが自分の経験やスキルに基づき、G-SHOCKらしさを保ちながら形状を修正して、また設計に渡すというやりとりです。今回は、このキャッチボールが非常に頻繁に発生しました。
設計者にとっては、従来の定型的な開発よりも手間が掛かったと思います。それでも「新しいG-SHOCKを作りたい」という思いで、一緒に面白がりながら、前向きに取り組んでくれました。
ドリームプロジェクト第2弾で得た知見を、まず市販モデルに展開したのが、メタルと樹脂を融合した「MT-G」シリーズのMTG-B4000です。人とAIの共創により、異素材を組み合わせた独創的なフレームを実現しました。
フレームは、カーボンとグラスファイバーを積層した素材から削り出しており、側面には美しいレイヤー模様が現れます。
こうした独創的な造形をG-SHOCKの品質を備えた製品にするため、デザインと設計で検証や修正を重ねました。最初のアイデアを広げる部分をAIによって短時間で進められたからこそ、そこで生まれた時間を、新規性や品質を突き詰めるために充てられたのです。
MONOist 新しい造形とG-SHOCKらしさは、どのように両立させているのでしょうか。5000系の伝統的なフォルムを受け継ぐGMW-BZ5000での工夫も教えてください。
赤城氏 どれだけ新しいスタイリングに挑戦しても、G-SHOCKらしさは外さないようにしています。それがなくなれば、新しければ何でもよいことになってしまうからです。
具体的には、塊感や構造的な力強さ、重厚感、少し遊び心のあるギミック感といった要素を意識し、一目見てG-SHOCKの系譜だと感じられるよう、全体をまとめています。
ただ、そのバランスは毎回難しいですね。長年のファンの方々は、それぞれの中に確立されたG-SHOCK像を持っています。一方、ブランドを10年、20年、50年と続けていくためには、新しい挑戦も必要です。過去には、その枠から外れ過ぎて「G-SHOCKらしくない」と評価された経験もあります。かといって、守りに入り過ぎると進化が止まってしまうので、新しいモデルを作るたびに悩むところです。
GMW-BZ5000で受け継いでいる5000系のスクエア形状は、ブランドの原点であり、変えてはいけない伝統のアイコンとして大切にしています。その厳しい制約の中で、AIのアイデアを活用しながら、伝統と新規性のコントラストを1つの時計の中に表現しようと挑戦しました。
正面から見ると従来の5000系の顔ですが、横や別の角度から見ると「今までと違うことをやっている」と感じられる立体的な造形になっています。必要な部分に強度や肉厚を残し、それ以外を削ぎ落としていく造形を、AIのヒントも参考にしながら設計者と突き詰めたのです。
構造としては、ベゼルとセンターケースが上下でかみ合う新しい形を採用しました。上下のパーツで異なる色や、ヘアラインとミラーといった異なる表面仕上げを組み合わせられるため、外観に新しいコントラストを生み出せます。
ベゼルとセンターケースは4本のビスで連結する構造です。実際に部品を固定する機能を外観にも取り入れ、メタルならではの美しさと合理性を追求しました。
MONOist AIを活用して得られた効果と、製品化後の反響をどのように受け止めていますか。
赤城氏 最も大きいのは、アイデアの種を見つけるスピードと量ですね。
人の手だけでアイデアを展開すると、デザイナーのスキルや使える時間に限界があります。時間がなければ、過去に経験した考え方や、慣れたパターンの中でまとめてしまいがちです。その限界を取り払いたかったので、AIの効果は非常に大きかったと感じています。
また、個人的には、デザインと設計のコミュニケーションが非常に密になったことも、副次的な効果だと感じます。AIのアイデアを基にした新しいデザインをどう実現するかという共通の課題によって、初期段階から頻繁に議論するようになりました。
社内やデザインチームからも、新しいアプローチや、これまでにないスタイリングに対して高い評価をもらっています。
一方、お客さまにAI活用という開発背景を伝える難しさも感じています。説明すれば「AIを使っているんだ」と理解していただけますが、その使い方や効果まで実感してもらうのは簡単ではありません。
ただ、これは私個人の考えですが、AIを使ったこと自体をアピールするよりも、その結果として、どのような新しいG-SHOCKが生まれたのかが大事だと思っています。製品を見て「何これ、かっこいい!」「今までと雰囲気が違う」と直感的に評価していただければ、それが作り手にとって一番うれしい伝わり方ですね。
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