――仕様、というと変なんですけど、駆動時間が5時間ですよね。長くしようと思えば幾らでもできるんじゃないかと思いますけど、5時間に設定した理由っていうのは。
市川氏 Moflinのメインターゲット層のペルソナは、30代後半から40代ぐらいの1人暮らしの女性と設定しています。その1日の生活リズムを検討して、帰宅してからフルに使える時間はどのぐらいかを検討した結果、やはり4時間から5時間は必要だろうということで、この時間に設定しました。
――なるほど。誰もいなくなれば、いわゆるスタンバイ状態みたいになって、省電力になるっていうことですか。
二村氏 はい。触っていないというか、かまっていないとだんだん眠たくなっていく、という言い方が正しいかもしれません。
――マイクについてですが、声掛けとかすると反応がありますよね。言葉に限らず、音楽とかかけても結構動いているんですけど、これは何をどのぐらいセンシングしているのでしょうか。
市川氏 言葉の認識はしていませんが、声の特徴を学習していく仕組みは搭載しています。日本語や英語など言語のくくりはなく、よく話しかけるオーナーの人の声を覚えていって、この人が飼い主だって分かると、飼い主だけに特有のかわいいしぐさを見せます。
――「ハウス」の設計についてもお話をお伺いしたいんですけど、これはいわゆる「巣箱」で、Moflinを充電する役割があるんですよね。ワイヤレス給電になっていますが、これもやはり端子でケーブルをつなぐのは違うだろうということで?
二村氏 実はそこは社内で結構もめたところでした。当然、コストを抑えたければ、USB給電でケーブルを刺すようにするのがいいでしょう。ただ商品企画側から、「Moflin本体には給電用の接点すら付けたくない」と強いリクエストがありまして。ワイヤレス給電にした分、原価は少し高くなりましたが、そこは企画のこだわりを優先しました。
――飼ってから時間がたつにつれ、性格が分かれていくようですけれども、これは何によって分岐していくんですか。
市川氏 オーナーとコミュニケーションをとる中で、Moflinの中でいろいろな感情が動いていく作りになっています。そこの感情の動き方によって、性格も分かれていきます。
――性格のパラメータが4つあって、そのバランスで全体の性格が決まっていくようですけど、この4つに決定した理由というのはどういうところでしょうか。
市川氏 Moflinのテストモニターからは、一緒に暮らす中であまりネガティブさを感じたくないというアンケート結果が得られました。やはり自分が可愛がるものであれば、ある程度はご機嫌でいてほしいということですよね。あまりにも悲しそうな感情を見てしまうと、オーナーがストレスを感じ、なんとかしなきゃいけないという気持ちになってしまう。それだとMoflinのコンセプトとは少し離れてしまうかなと考えました。
でも本物の生き物であれば、いつもポジティブなわけではなくて、ネガティブな面も少しはあります。そのバランスをどう取るかですが、シャイだとか甘えん坊だとかの性格に収めるぐらいであれば、ストレスも感じず、それなりに生き物らしさも表現できるだろうと、このように決めました。
――性格パラメータが完成するまでに、どのぐらいの時間を見ていらっしゃるんでしょうか。
市川氏 できなかったことができるようになるという意味での「成長」、一応、50日ぐらいで「大人」に成長するように設定はしています。
ですが、Moflinにはその後もいろいろな変化が生じます。一度形成された性格がその後もずっと固定化されるというわけではないです。
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