日本の固定資産がどういった水準にあると評価できるか、国際比較で確かめてみましょう。
上のグラフは、固定資産の人口1人あたりの水準を比較したものです。ドル換算値でみると、日本はバブル期に急激に増大しています。バブル崩壊後も増え続けて1995年にピークを迎え、その後は停滞気味ではありますが、少しずつ増加している様子が分かりますね。
このシリーズでよく見る傾向のグラフです。ストック面でも同じような推移となるのは興味深いですね。
そうですね。固定資産は減耗分もありながら、毎年少しずつ価値が蓄積していくわけですが、日本の場合は1989年から1997年にかけて急激に増えました。
ご存知の通り、この時期は円高が進んでいたので、その分ドル換算値で嵩上げされたところはありますが、円ベースで見ても1989年から1997年の8年間で、固定資産が1080兆円から1680兆円と1.6倍にもなったのです。
当時の日本経済の勢いが、固定資産の積み上げに繋がったのですね
まさにこの時期に、家計の現金/預金や企業の借入の水準が、バブル期から一段と急増したのです。ぜひ前回のグラフと照らし合わせながら眺めていただければと思います。
なるほど、バブル崩壊後に投資が減るのではなく、むしろ増えているというのはとても興味深いです。最近の水準は、米国やドイツには差をつけられていて、フランスと同じくらいですね。
はい、固定資産による日本の優位性が薄れつつあるということかもしれませんね。韓国やカナダとの差もかなり縮まっています。
続いて、固定資産の水準を形態別で比較してみましょう。
項目ごとに傾向は似ていますが、日本の相対的な水準はずいぶんと異なりますね。
そうですね。順にみていきましょうか。
住宅は1990年代半ばでもそれほど大きな水準ではありませんね。ドイツやフランスの方が大きかったようです。
住宅の固定資産価値は、最近では韓国に抜かれて、主要国で最下位となります。日本の住宅は木造が多く、耐用年数が他の主要国と比較して短いことも関係しているかもしれません。
なるほど。機械/設備は1990年代に米国やドイツを大きく引き離していましたが、その後は横ばいが続いています。最近では米国やドイツよりも少ないですね。韓国にも追い付かれそうです。
はい、私たち製造業とも大きく関係する項目です。機械設備による優位性が薄れつつあるということが良く分かります。ただし、まだ相対的には大きい状態ですから、これをどのように付加価値向上に生かせるかを考えなければなりません。
その他の建物/構築物は、日本の水準がさらに一回り高い状況です。少しずつ増加傾向にも見えます。最近の水準でも米国とほぼ同等で、韓国やドイツを大きく上回っているようです。
これらの建物/構築物は耐用年数も長く、価値が蓄積しやすいということかもしれません。総固定資本形成でも、相対的に高い水準が続いています。また、知的財産生産物も、最近は停滞傾向ながら、他国よりも高めの水準です。
バブル期/ポストバブル期で過剰に高まりながらも、少しずつ調整されており、現在、ストック面では主要国でやや高めの水準にあることがよく分かりました。
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