NTTデータと香味醗酵は、組み合わせ最適化技術を活用した匂い再構成技術に関するパートナーシップ契約を同年4月1日に締結する。
NTTデータと香味醗酵は2023年3月27日、組み合わせ最適化技術を活用した匂い再構成技術に関するパートナーシップ契約を同年4月1日に締結すると発表した。
香味醗酵は、大阪大学産業科学研究所 教授の黒田俊一氏が独自開発した「人が持つ約400種の嗅覚受容体の応答による細胞内カルシウム濃度変化を経時的に測定する技術」と人の嗅覚受容体を網羅的に再現した人工鼻「ヒト嗅覚受容体発現細胞アレイ」を事業化するために、2017年に設立された大阪大学発のベンチャー企業。
久保賢治氏が代表取締役社長を務め、大阪大学吹田キャンパス(大阪府吹田市)内に約400m2の研究所を設けて、両技術を活用し、人が匂いを感じる仕組みを再現して、香り関連の事業創出を推進している。
【訂正】初出時に、記事内の人名に誤った人名を掲載していました。お詫びして訂正致します。
今回のパートナーシップでは、両社が2022年11月から取り組む「少数の匂い成分から膨大な匂いと香りを作り出す組み合わせの最適化に関する共同実験」の成果を発展させ、現在の特定領域に対する共同実験から、匂いビジネスの推進と提携を目的とした連携に拡張する。
当該実験では、NTTデータが数理最適化を得意とする量子アニーリング方式の量子コンピュータを活用し、出力結果の精度を維持しつつ、香味醗酵が構築した「匂いデータベース」に保存された8000種類の香料の匂い成分を組み合わせることに成功した。
13種類の香料の匂い成分から、異なる組み合わせの5パターンで対象の香りを生成することも実現している。これにより、少ない香料の種類で適切にターゲットの香りを創出可能なことも分かった。
久保氏は、「匂いの組み合わせ計算は、生成したい香りで必要な匂い成分の種類数が多いほど、組み合わせで要する計算の負荷が高まるため、人手と通常のコンピュータで行っていた従来の処理方法では1000種類の香料の匂い成分を組み合わせることで限界だった」と従来手法の問題を語った。
また、ターゲットとなる匂いに完全に一致するものを合成できない際に、実際に試作品を調合してABテストを行う必要がある。しかし、試作品の調合には手間とコストがかかるため、求める匂いに近い候補を絞り込まなければならない。このようなケースでも共同実験で適用した手法が有効であることが判明した。
今後は、香料の匂い成分を高度に組み合わせることや匂い成分の配合比率の最適化、対象物の香りに近い複数の匂いを瞬時に算出する方法の開発などを進め、2025年までに10件以上の匂いに関するビジネスの創出を目指す。「3年後には3000種類の対象物の香りを匂いデータベースに蓄積された香料の匂い成分から作れるようにしたい」(黒田氏)。
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