「品質に関する力について落ちていると感じていますか」という質問については、「落ちている」が53.5%、「変わらない」が22.5%、「上がっている」が14%、「分からない」が10.2%となった。
これらの「品質の力」についてもそれぞれの回答の理由についてフリー回答で答えてもらっている。
「上がっている」とした理由としては「2000年台前半の中国は安かろう悪かろうの典型的な例であったが、徐々に地力がついてきており品質意識の向上がさらなる売り上げの拡大につながっていくと理解する経営者が増えてきた。また、技術的に機械化や自動化も進んできており人のスキルに頼らず安定した商品を作ることが増えてきた」など、中国などの製造拠点における技術力が高まってきた点を挙げる声があった。
また「図面との整合性をきっちりするようになった。明確でない点があればきちんと図面に入れてもらうようになった」「図面に表記する内容のレベルが上ってきているから(あうんの呼吸でなくデータで表現している)」などの設計の在り方が改善したという点や、「ISOを経験して企業として成長したと感じるから」「テストエンジニアの視点では、ソフトウェアテストにおけるテスト設計技術とテスト技術者の知見は年々向上しているため」など、ツールや手法の進化などを理由とする声も多く出ていた。
一方「変わらない」とした回答者は、身近で大きな品質問題に出合っていないため現状で問題ないという認識が多かった。「今も昔も、深刻な品質問題が身の回りには無いので」「故障率に変化なし」「不良品発生率は安定しているため」など、安定した品質管理が行われていることが伺える回答となった。興味深い回答としては「製造品質は製造設備の機能向上でよくなっているが、設計品質は技術者の入れ替わりによって落ちているため、トータルで変わらないと認識をしている」としたものがあり、人に関する部分の低下を指摘していた。
「落ちている」と回答した理由は、大きく分けると3つに集約できる。1つ目は「品質に関する要求が高くなっている」という点だ。「顧客の要求レベルが上がっているが、対応が遅く、相対的に落ちていると感じている」「機能が複雑化し、技術の多様化により品質の作り込みが難しくなっている。これが品質検証の自動化を難しくしている面がある」「要求の変化に追い付いていない」などが理由として挙がっている。
2つ目は「技術者のスキルや意識の問題」だ。特に数多く挙がっていたのが「原理原則」についての意識やスキルの低下と、これらについての技能伝承についての指摘だ。「技術力(原理原則の観点)が落ちている」「視点や観点の多様性が無くなってきている」「信頼性テストなどのノウハウが共用できず、なぜその評価が必要かというノウハウが伝わっていない」「明文化せず人の『感度』に頼っていた部分が多い職場ほど、それが後進に引き継がれずに知見のレベルが劣化しつつある」「人の力量に左右されるところは製造上全くなくすことはできないが、そういうポイントが伝承できていない」などの声が挙がっている。
特に設計領域でのスキルや意識不足を指摘する声も多く「図面の質が低下。現場を知らない設計者の増加」「設計者が素人が多い。加工方法が分からずに図面を書いている」「設計者が生産現場を見ることが無くなった」「全体を見通せる人物がいなくなった」などが出ていたことは特徴的だった。
3つ目が「体制の問題」だ。品質に関する要素が複雑化しているにもかかわらず、十分な体制の強化や人員の強化が行われていないと指摘されている。「マンパワー不足で、現場(中国の委託工場)任せになってきている」「企業の成長に合わせて、生産数が増加したが、生産人員増員時の教育が不十分。口頭伝承だけでKnowHowやKnowWhyを教えていない」「人手不足でかつ業務が忙しすぎて、教育の時間、打ち合せ時間が削減されている」など、現場を十分に支える動きがないことに不満を示す声が大きかった。
この他、一時的な問題として「コロナで工場を訪問できない」「コロナなどで頻繁に現地に行けないため、細かな管理が行えない」「コロナの関係で現地へ行けないことによって製造確認、監査、コントロールの効果が効かず、品質のばらつきが発生」などコロナ禍による移動制限が品質低下を招いたというコメントもあった。
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