GR86をHoloLens 2で観察、MRだから分かる部品のレイアウトやエアロパーツの効果製造業のデジタル変革

「フォーラムエイト・ラリージャパン2022」が2022年11月10〜13日に愛知県と岐阜県で開催された。日本マイクロソフトは参戦チームが車両の整備や保管を行う「サービスパーク」にブースを設け、来場者向けにHoloLens 2体験を実施した。

» 2022年12月15日 10時00分 公開
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 FIA(国際自動車連盟)の世界ラリー選手権(WRC)「フォーラムエイト・ラリージャパン2022」が2022年11月10〜13日に愛知県と岐阜県で開催された。

 ラリージャパンの開催は12年ぶりで、一般道を封鎖して用意されるコース「SS(スペシャルステージ)」は観戦チケットが完売。SSとSSの間の移動区間(リエゾン)の沿道にも、参戦車両を一目見ようと多くの人が集まった。日本でのWRCにトヨタ自動車が初参戦することも、注目を集めた要因だといえる。

 参戦チームが車両の整備や保管を行う拠点「サービスパーク」となった豊田スタジアム(愛知県豊田市)も、連日にぎわった。ラリーカーやドライバーを間近に見られる他、車両の展示や物販、飲食などの出展エリアも充実していたためだ。

 その中で、日本マイクロソフトも「HoloLens 2」を体験できるブースを設けた。ブースにはトヨタ自動車の協力の下で「GR86」を設置。ブースを訪れた人が、HoloLens 2を通してGR86の特徴や部品のレイアウト、エアロパーツの効果などについて知ることができる体験を用意した。

注目モデルのGR86をMRで観察できる体験を実施した

 GR86は2021年10月に発売されたトヨタ自動車のスポーツモデルだ。ドライバーの意のままに操れる“手の内感”や、限界域でのリニアな応答、キビキビした走りを実現。現在、後輪駆動(FR)でMT(マニュアルトランスミッション)のスポーツモデルが少ないこともあって、ラリージャパンに足を運ぶ熱心なクルマ好きが詳しく知りたい1台でもある。

 HoloLens 2で見せたプレゼンテーションでは、実際のGR86に重ね合わせながら説明内容に関連する部品をハイライトして目立たせたり、部品とECU(電子制御ユニット)の通信を立体的に示したりした。また、モータースポーツの知見を生かしたエアロパーツの紹介では、アニメーションによる空気の流れを実車に重ねて効果を示した。オプションパーツでは価格表を3Dホログラムで表示しながら装着イメージを紹介するなど、MR(複合現実)の利点を生かしたコンテンツを提供した。

GR86の車体骨格の見え方のイメージ

 HoloLens 2の体験は、クルマ好きに特に響いたようだ。展示車両のGR86や、クルマのメカニズムやエアロパーツなどについてよく知っている来場者は、「ECUなどクルマの“臓物”はなかなか見る機会がありません。カットモデルでも分かりにくいことがあるので、分解せずにクルマのことが分かるのは面白いです。CAN通信を車両に重ねる見せ方などは、展示会にも向いているのではないでしょうか」と楽しげに感想を述べた。

 HoloLensとMRの強みは、目に見えないものをバーチャルにシミュレーションし、それを現実に見えているものに重ね合わせることでリアルに体験できることにある。クルマについてよく知っている人にこそ、クルマをMRで見るメリットや良さが伝わったようだ。

クルマ好きほどHoloLens 2の体験を楽しんだようだ

 MRに対する認知度は高まりつつある。2016年ごろ、「VR元年」と呼ばれていた時期にはVR(仮想現実)やAR(拡張現実)とMRの区別などが浸透しておらず、ゲームやエンターテインメント向けの技術であるという印象も強かった。4〜5年をかけて、ゲームだけでなくビジネスや業務にも使えるという認識が広まり、活用を検討する人が増えてきた手応えを、日本マイクロソフトでも感じている。

 ただ、一般の人々の間ではまだ認知度が低い。イベントなどでHoloLens 2を初めて体験するという人が少なくなく、既に販売されていることを知らなかったという人もいる。日本マイクロソフトでは、こうした体験の場を通じてMRがどのようなものか知ってもらい、自分自身の仕事や業務で活用するイメージを持ってもらうきっかけにしていきたい考えだ。企業としてトップダウンでデジタル技術の活用を推進することも重要だが、現場の一人一人がそのメリットを体感した上で業務での活用を考えていくことも、デジタル技術が浸透する上では不可欠だ。

HoloLens黎明期からのトヨタ自動車の取り組み

 今回、日本マイクロソフトがラリージャパンの会場にブースを設けたのは、12年ぶりの開催とトヨタ自動車のモータースポーツの取り組みを応援し盛り上げたい、という思いが現場にあったのが理由だ。日本マイクロソフトは2017年からTOYOTA GAZOO Racingのスポンサーを務めていた。また、ブースでHoloLens 2体験を行った背景には、HoloLensの活用で2017年ごろから協力していることも影響している。

 「MRやメタバースは現在製造業で話題になりつつありますが、トヨタ自動車はその先駆けです。HoloLensがデビューしたころから、製造や販売の現場での活用を模索されています」(マイクロソフトコーポレーション 戦略パートナーシップ部門の吉田正裕氏)。自動車整備向けの修理マニュアルだけでなく、製造現場などの領域でのHoloLens活用が早い時期から始まっていた。

 以前から塗装の膜厚検査や試作工場での設備移設などの作業でMR技術の活用を公表していたトヨタ自動車は2019年5月、自動車の修理・点検業務においてMRやHoloLens 2の活用を検証すると発表。さらに2020年10月には、トヨタ自動車のスポーツモデルの販売やカスタマイズなどを手掛ける「GR Garage」の全国56店舗でHoloLens 2を導入すると発表した。

 クルマは従来のメカ部品に加えてセンサーなど電装部品の搭載が増加しており、配線やレイアウトが複雑化。メカニックにとって、そうした車両に関する情報を調べる作業の重要度が高まっている。GR Garageでは、配線図や艤装図の表示、作業手順を示すガイドやトレーニング、遠隔地とのコミュニケーション支援、新型車の機能解説にHoloLens 2を活用する。新型車の機能解説は、ラリージャパンの会場で提供したHoloLens 2の体験と同様の内容だ。

 この取り組みでは、修理や点検などで参照する作業手順書や修理書を3Dのデータで配布し、配線や艤装を3Dで実車に重ねて表示することで正確な位置を直感的に理解できるようにした。また、品番や品名、回路図などの情報も一括して表示し、メカニックが正確で効率的な作業を行えるように支援する。

 作業手順書や修理書は車種ごとに用意されている。紙ベースで参照する場合に場所をとることはもちろん、オイルなどで手が汚れた状態ではマニュアルを保存したノートPCを操作しづらいなど、使い勝手に課題があった。イラストで図示された部品や配線図と実車の該当箇所を照合したり、少ない手順であってもマニュアルを数ページめくったりする必要があるなど時間を要する。また、2Dのイラストでは、内部の構造や、部品脱着時の勘やコツを伝えるのにも限界があった。HoloLens 2はこうした課題の解決を図るデバイスとして導入された。

 GR Garageでは、パーツや用品の取り付けにおいて3Dホログラムを作業ガイドやトレーニング用の教材として活用している。汎用的なアプリ「Microsoft Dynamics 365 Guides」を使用するため、プログラミングが不要で販売店でも独自の教材を作成することが可能だ。

 また、HoloLens 2と「Microsoft Teams」を組み合わせたコミュニケーションもGR Garageで取り入れる。遠隔地のオフィスにいる専門家が、現場のメカニックが装着したHoloLens 2の映像をリアルタイムに見ながら会話することができる。映像に矢印などを書き込めるアノテーション機能によって、隣にいるかのような具体的な指示ややりとりが実現する。

 全国のGR Garageに約100台のHoloLens 2を導入するに当たって、トヨタ自動車はクラウド上でデバイスを運用管理できる「Microsoft Endpoint Manager」を活用。OS設定やアプリ配信、細かな設定や状況把握などの運用工数を大幅に削減する。

MRだけでなくメタバースも製造業に

 日本マイクロソフトでは現在、産業分野でのメタバースを通じたデジタルトランスフォーメーション(DX)「インダストリアルメタバース」を推進している。インダストリアルメタバースは、デジタルツイン、人物やモノのアバター、業務プロセスで構成される。HoloLens 2とMR技術はその中核となる技術の1つだ。

 メタバースは現時点ではゲームやエンターテインメントの色が濃いが、ハードウェアやクラウド、ソフトウェアの進化によってビジネスでも活用の幅が広がっている。ゲーム向け、エンターテインメント向けと先入観を持たず、一度体感すれば業務に取り入れるヒントが得られるかもしれない。

写真左からマイクロソフトコーポレーション 戦略パートナーシップ部門の吉田正裕氏、日本マイクロソフト Mixed Reality グローバルセールスの堀内保子氏、同 Mixed Reality マーケティングの上田欣典氏、同 マーケティング&オペレーションズ部門の秦昇一郎氏

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