2024中計における成長の中核となるのは、小島氏が推進してきたデジタルソリューション群「Lumada」の事業である。2021年度の時点で、Lumada事業は売上高が1兆4000億円、Adjusted EBITAが2000億円だが、2024年度には売上高が2兆7000億円、Adjusted EBITAが4000億円で倍増する。「Lumada事業で全社利益の3分の1を占めるようになる」(小島氏)。一方、Lumada事業以外の、基盤となるIT、OT(制御技術)、プロダクトについては、全ての事業でAdjusted EBITAとROICが10%以上となるように収益性を改善していく。小島氏は「Adjusted EBITAで10%に届かないと判断した場合には事業を入れ替える。大きな構造改革は終わったが、改革の手は緩めない」と強調する。
これまでLumada事業は、主にITセクターが関わるコア事業と、他セクターが担当する関連事業に分けて売上高を発表しており、利益面については大まかな利益率などは開示していなかった。2024中計では、Lumada事業の詳細がより分かりやすくなるように新たな区分での開示を行う。新たな区分は、コンサルや顧客協創などソリューションの企画段階に当たる「デジタルエンジニアリング」、企画したソリューションをシステムとして構築する「システムインテグレーション」、デジタルサービスの基盤となる機器や設備の「コネクテッドプロダクト」、ソリューションの運用や保守で用いられるクラウド型サービスなどの「マネージドサービス」の4つ。Lumadaの顧客協創における、PLAN、BUILD、OPERATE、MAINTAINから成るサイクルと連動しているのが特徴だ。また、各区分の売上高だけでなく重要指標となるAdjusted EBITA率の目標も決めた。
小島氏は、Lumadaの事例として、自動車業界での協創から始まった「製造プロセス革新」と、日立エナジーの協創が起点となっている「アセットマネジメント革新」を挙げた。これらの事例は、既に他の企業や業界への横展開も始まっている。
2024中計から事業の中核となる3セクターについては、2024年度の財務目標を達成するための事業計画、Lumada事業計画、注力事業分野、重点施策を説明した。
グリーンエナジー&モビリティは、世界的なカーボンニュートラル需要を取り込む形で成長を目指す。特に、ABBから買収した送配電網事業を手掛ける日立エナジーについては、売上高で2021年度の9571億円から2024年度に1兆1000億円を目指す。
デジタルシステム&サービスは、先進デジタル技術の供給源として日立全社の成長をけん引する役割を担う。中でも、2021年7月に買収を完了したグローバルロジック(GlobalLogic)は、売上高で2021年度の1280億円から、2024年度に2250億円、他事業とのシナジーやM&Aの分を加味すると2820億円まで伸ばす計画になっている。
コネクティブインダストリーズは、強い中量産系プロダクトをデジタルでつなぐことによるリカーリングビジネスモデルでの成長が鍵になる。特に期待が大きいのが北米事業で、ロボティクスSIを手掛けるJR Automationの事業拡大に加えて、リカーリング型事業が成長することを見込んでおり、売上高で2021年度の2110億円から2024年度に3818億円を目指すとしている。「LumadaのIoT活用という観点ではこのセクターが最も事業機会が大きい。Lumada事業計画も、売上高の年平均成長率で29%と最も強い計画を持っている」(小島氏)という。
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