シーメンスは2022年1月25日、事業戦略発表会を開催し、クラウドビジネスを本格拡大する方針と、脱炭素化に向けた新たな情報基盤を展開することを発表した。
シーメンスは2022年1月25日、事業戦略発表会を開催し、クラウドビジネスを本格拡大する方針と、脱炭素化に向けた新たな情報基盤を展開することを発表した。
シーメンスでは「デジタルエンタープライズ」というコンセプトを打ち出し、モノづくり工程の「製品」および「生産」において、フィジカルの世界とバーチャルのパフォーマンスデータを緊密に連携させる「デジタルツイン」化を積極的に進める方針を示している。
これらの水平方向での連携に加え、シーメンスでは企業内の垂直方向での連携を実現できる仕組みも提供。フィールドのセンサーやモーター、ドライブから、クラウドまでを一気通貫でつなぐ環境の提供を目指している。「水平方向での連携、垂直方向での連携を双方カバーしているという点でシーメンスはユニークな存在だ」とシーメンス 代表取締役社長兼CEOの堀田邦彦氏は述べる。
これらを推進する中で、シーメンスが現在強化しているのが、クラウドビジネスの拡大だ。シーメンスでは2019年にクラウドプラットフォームである「Xcelerator」を発表している。これは、CADやPDM、各種シミュレーションやIoT(モノのインターネット)分析などのアプリケーションをクラウド基盤上で使えるSaaS(Software as a Services)型のプラットフォームである。“クラウド基盤”としているものの、パブリッククラウド、プライベートクラウド、オンプレミスなどユーザーの求める環境に合わせて、同じアプリケーション環境が構築できる点が特徴だ。
既に設計環境向けなどではクラウド環境への移行提案が進んでいるが、新たに製造現場およびエンジニアリング情報の集約を行う「TIAポータル」をクラウド対応した「TIAポータルクラウド」の日本での提供開始を発表。まず体験版の無料提供を開始する。体験版では「TIAポータルクラウド」と最大12GBのファイルシェアサービスを使用できるという。さらに今後、サブスクリプションモデルを開始する計画だとしている。
クラウド上で活用できるアプリケーションを拡充することで「Xcelerator」でカバーできる範囲を広げていき、デジタルツインの世界を広げていく方針だ。「クラウドサービスというと固定化されているように思われるが、ローコード、ノーコード開発を行える『Mendix』などもポートフォリオに加えており、それぞれの現場で自由にカスタマイズして使えるような世界を実現する」と堀田氏は語っている。
クラウド移行については日本の製造業ではセキュリティなどへの懸念が指摘されているが、堀田氏は「クラウド化は3年かけて進めていく計画だ。セキュリティやアクセススピードなどへの懸念は多くの顧客が示しており、検証を行っているケースも多い。ただ、その意味でも現状では、オンプレミスでもクラウドでも使えるハイブリッドSaaSを訴えており、このコンセプトは受け入れられている手応えを感じている。クラウドリソースを使ったシミュレーションやコラボレーション設計などへの関心が高い。一方で現状の顧客の環境は大幅にカスタマイズされているものが多く、クラウド環境への移行が大変な点がハードルとしてある」と語っている。
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