特集:IoTがもたらす製造業の革新〜進化する製品、サービス、工場のかたち〜

たとえば中堅製造業のDXセキュリティ担当がいきなり社長にプレゼンするような物語事例で学ぶ製造業DXセキュリティ対策入門(5)(3/4 ページ)

» 2022年01月20日 10時00分 公開
[佐々木弘志MONOist]
※本記事はアフィリエイトプログラムによる収益を得ています

大黒様のお告げ

「最低限」の案と、「推奨」の案の2つで見積もっていまして、「最低限」が3年で7000万円、「推奨」が3年で1.5億円かかる想定です。事故発生時の被害想定額は、何も対策しない場合の20億円から、「最低限」で8億円、「推奨」で4億円に減ります。


ふむふむ。なるほど……。


 そういって社長は何かを考えるようにして、しばらく黙り込んでしまった。やっぱり金額が高すぎたのかなぁ。だから最後まで説明してから金額の話をしたかったのに。

青井さん、1つアドバイスです。このページは、資料の最初に持ってきてもらえませんか?


はい? 最初に、ですか?


そうです。正直、この金額だったら役員会の決裁は割れないと思います。


え? そ、そうですか。


 やっぱり、金額だけでダメって判断できてしまうということかな……。

はい、「推奨」の案で進めることに文句を言う人はいないと思いますよ。


へぇ?


 驚き過ぎて、思わず変な声が出てしまった。社長がけげんな顔でこちらを見ている。

別に責めているわけではないのですよ。この工場DXセキュリティ対策プロジェクト決裁のために、私を含めた役員は、まず、どれだけ会社に影響のある話かが知りたいのです。1億なのか、10億なのか。どの部門が関係するのか。それによっては、もう皆さんに任せるよといった判断もできるのでね。


はぁ。なるほど。そういうものなのですね。


なので、前置きはいろいろあるかと思いますが、結論は最初の3分以内にお願いします。今後、役員向けにプレゼンするときには、心掛けていただくと良いです。でないと、寝てしまう役員もいますから。


寝てしまうって……。


それは冗談と言いたいところですが、うちもまだまだ古い体質が残っていましてね。それはさておき、今回の工場DXプロジェクトは、役員の総意で、社運をかけて進めています。3年で1.5億ということは、1年で5000万の投資ということですから、その金額で、頭の痛いセキュリティ対策が片付くなら、安いものですよ。


安いもの……ですか。


あ、失礼。決して軽視しているわけではなくて、私を含めた役員の皆さんは、セキュリティ対策は、もっとお金がかかると思っているということです。なので、まとめを最初に持ってきた方が、その後の議論が発散せずに済むかなと思いまして。


はい、貴重なアドバイスありがとうございます。


 このまま役員会で話していたら、結論たどり着く前に、議論が発散していた可能性があるということか。早速、あとで資料を修正しておかないと。大黒様のお告げありがたや。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.