東芝のデジタル生産技術は工場の枠を超え「スマートマニュファクチャリング」へスマートファクトリー(2/3 ページ)

» 2021年06月22日 10時00分 公開
[朴尚洙MONOist]

スマートファクトリーの構築で現場の協力を得るために

 全ての業務プロセスの変革を目指すデジタル生産技術だが、スマートファクトリーの構築でも重要な役割を果たす。清野氏は「スマートファクトリーの高度化レベルと対象領域を見ると、国内製造業のほとんどがレベル2や工程ライン単位にとどまっているのが現状だ。50〜60%が見える化に取り組みたいが未着手という調査結果もある」と述べる。

スマートファクトリーの目指す姿 スマートファクトリーの目指す姿(クリックで拡大) 出典:東芝

 東芝グループでも高度化レベルの向上と対象領域の拡大に向けた取り組みを進めている。例えば、空調機を手掛ける東芝キャリアの中国社の新拠点立ち上げでは、収集したデジタルデータに基づく「現場改善の高速化」、3D生産シミュレーションを活用したライン設計などの「検証・評価の高度化」、そしてこれらの知見を新拠点のレイアウトに反映することによる「現場作業の自動化」を進めている。

東芝キャリア中国社のスマートファクトリー構築事例東芝キャリア中国社のスマートファクトリー改善加速事例 東芝キャリア中国社の新拠点立ち上げにおけるスマートファクトリー構築事例(左)とスマートファクトリーによる改善加速事例(右)(クリックで拡大) 出典:東芝

 また、東芝テックの静岡事業所(大仁)(静岡県伊豆の国市)では、人手による組立作業内容のリアルタイム抽出と、作業状況を分析して実作業にフィードバックするというCPSループを回しているという。

東芝テックの静岡事業所(大仁)におけるスマートファクトリー構築事例 東芝テックの静岡事業所(大仁)におけるスマートファクトリー構築事例(クリックで拡大) 出典:東芝

 清野氏は「国内製造業のスマートファクトリーに向けた取り組みでは、当社のMeisterシリーズのようなソリューションの導入を進めたい推進部門と現場の間で連携がとりにくい状況が生まれている。現場としては『なぜそのようなシステムを入れる必要があるのか』といった反発がある。そこで、われわれ生産技術センターのメンバーが現場に入って、どのようなデータを取ればどのような改善ができるのかなど、モノづくりの経験を基にシステムの有用性を示すことで現場の協力を得られる。これをスマートファクトリー構築のスキームとしている」と説明する。

東芝デジタルソリューションズの「Meisterシリーズ」と生産技術センターが連携 東芝デジタルソリューションズの「Meisterシリーズ」と生産技術センターが連携して顧客のスマートファクトリー構築を支援する(クリックで拡大) 出典:東芝

スマートファクトリーにとどまらない「スマートマニュファクチャリング」

 生産技術センターでは、スマートファクトリーにとどまらない「スマートマニュファクチャリング」への展開拡大を目指した取り組みも進めている。

 このスマートマニュファクチャリングは、工場内における生産性向上を目指すスマートファクトリーと、東芝の製造業向けインフラサービス事業としてのO&M(Operation&Maintenance:運用と保守)領域でのソリューション提供を組み合わせたより広い概念になる。「工場を対象にしたデジタル資産技術を基にしているが、O&Mサービスは工場の中で使うとは限っていない。また、設備機器メーカー向けにも展開可能なものだ」(清野氏)という。

スマートマニュファクチャリング スマートマニュファクチャリングは、スマートファクトリーとO&Mサービスの組み合わせたより弘概念になる(クリックで拡大) 出典:東芝

 例えば、工場RPA(Robotic Process Automation)となる「あやつり制御技術」や、AI(人工知能)良品学習画像検査、メーター読み取り、フィールド計測技術、音声アシストツール、スケジューラー、生産シミュレーションなどがO&Mサービスとして横展開可能と想定している。

O&Mサービス領域で提供可能なソリューション O&Mサービス領域で提供可能なソリューション(クリックで拡大) 出典:東芝

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