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» 2021年06月08日 10時00分 公開

製造業では無償が当たり前のソフトウェア、どうすれば有償のサブスクに導けるかサブスクで稼ぐ製造業のソフトウェア新時代(11)(2/3 ページ)

[前田利幸(日本セーフネット/タレス・グループ),MONOist]

どのようにしてソフトウェアを有償サブスクリプション化させるのか

 無償だったソフトウェアをどのようにして有償化して、サブスクリプションをサービスできるようになるのか。顧客の理解を得ながら、無償だったソフトウェアをどのようにすればお金を取れるようになるのか。もちろん一筋縄では行かないのは確かだ。

 しかし、ベンチャーキャピタリストであるフレッド・ウィルソン氏が2006年に提唱した、フリーミアム(Freemium)という、あまりに有名なビジネスモデルがある。実はこのフリーミアムをライセンシング技術で実現することが最も効果的な戦略だ。ライセンシング技術によって、ソフトウェアを無償版と有償版で機能制限して提供するのだ。

 かといって、いきなり全ての機能を有償化する必要は全くない。ライセンシングによって、新しい機能や、付加価値のある機能について、サブスクリプションライセンスを必要とさせ、無料の基本機能に加えて、有償で機能を利用させることから始めることだ。

 無償の機能についても、あらかじめ利用者の情報を登録した上で、無料のライセンスの入手を必要とすれば、利用者の情報が収集できるようになる。無料の利用者は見込み客でもあり、「サービス」として定期的に価値ある情報を伝え続ければ、いずれは有償の機能を必要とする時が来るだろう。無料のライセンスの利用者からソフトウェアの利用データを収集できれば莫大な利用データの収集も期待できるだろう。収集した大量のデータ有償サービスに向けた貴重な情報として意味を持ち、将来的な利益やソフトウェアの付加価値を生み出す源泉となり得る。

イメージ ※図はイメージです

 新しい機能はトライアルとして期間限定で試すことができて、そこから有償サブスクリプションに誘導することもできるようになる。トライアルとしてマーケティング情報を得ることができて、サブスクリプションで収益に結び付けることも可能にするのだ。

 こうしたライセンシング技術の活用によって、われわれが普段のデジタルマーケティングの世界で実践していることを、製造業のソフトウェアに実践、応用させていけばよい。

 米国の技術メディアWiredの元編集長であり、現在は3D RoboticsのCEOであるクリス・アンダーソン氏の著書「FREE」では、フリーミアムの戦術の欠点として、機能制限する場合に有償版と無償版の2つの製品を作る必要が手間だと述べている。しかし、ライセンシング技術を活用すれば、2つのバージョンの製品など作る必要はない。1つのバージョンのソフトウェアを、ライセンスによって無償版と有償版に機能レベルで切り替えが実現できるようになる。さらに機能レベルで契約形態をも変更することが可能だ。それくらいライセンシングはビジネスモデルの実現に優れたテクノロジーなのだ。

 こうしたアプローチは、売り切り型からサブスクリプションに切り替える場合にも効果がある。基本機能は売り切り型で提供して、付加価値のあるオプション機能や新しい機能はサブスクリプションで提供するといった手段だ。

 しかし、それでも売り切り型を好む顧客は少なくない。そのため売り切り型をすぐさま止めてしまうよりも、サブスクリプションが有利になるように価格とサービスを充実させる。全ての顧客をすぐさまサブスクリプション化させるのではなく、あらゆるオプションを活用して、数年の移行期間を経て徐々にサブスクリプションに移行させるのだ。

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