本連載では“品質”と“コスト”を両立したモノづくりを実現するDX戦略を解説する。第2回目は、DXを通じた設計改革における改革の“優先順位”を解説する。改革においては、時にはヒアリングして判明した課題感を後回しにしても優先すべき事柄がある。
DX(デジタルトランスフォーメーション)による改革活動の難しさの1つに、「優先順位」の決め方がある。どのような課題を設定して、どれを優先して解決していくか。多くの場合は、各部署に対して“アンケート”や“ヒアリング”を実施し、課題リストを作成する。その後、それらをグルーピングし、実施効果や課題数から優先順位を決めることが多い。
無論、各部署の声をしっかり拾い、改革を進めることは重要である。が、このアプローチに対しては2つの疑問が生じる。1つは、“ヒアリングで出た課題が、本当に正しい課題なのか”という点だ。各担当者は、業務連携のあるべき方向性や最新のテクノロジーを駆使した仕事を知らないし、イメージできない。そうなると、日々行っている面倒な作業を課題に挙げてしまうのだ。
もう1つは、“数が多い課題を優先にすることが本当に正しいのか”という点だ。頻度や効果の要素も考慮しているが、やはり皆が困っている課題から優先にするというのは、進め方として分かりやすいし、各部署に対しても説明しやすい。
しかし、ヒアリングで出てくる課題は、大きな改革事項より目の前の改善事項が多くなってしまう。例えば、図面検索の項目が少ない。図面検索が遅い。部品番号の採番が面倒。部品表登録が手間などだ。設計力向上というより間接業務の不満が中心となりやすい。
「ヒアリングで出た課題を解決しても、会社全体が目指すべき姿にならない」ということを念頭に、適切に優先順位を決める進め方が必要となるのだ。現場を目の前にして、「皆さんの困りごとを解決しますよ」と言えば反発は少ないだろうが、時には現場の困りごとを無視する勇気を持つことも重要な要素となる。
では、優先順位の決め方はどうすればいいか。繰り返しになるが、現場の困りごとを聞いて、効果や課題数を考慮して優先順位を決める方法を完全に否定しているわけではない。やはり、現場に寄り添い、困りごとに耳を傾ける姿勢がなければ、現場を巻き込み改革を定着させることができないからだ。しかし、現場に寄り添う気持ちを持ちすぎると、DXのような大きな改革もできないことも理解しておかなければならない。
改革の柱を決める大きな考え方は3つある。(1)上流からの改革、(2)プロセスではなくデータの改革、(3)効率化ではなく高度化の改革である。今回は(1)上流からの改革についてのみ触れて、(2)(3)に関してはまた別の機会に紹介したいと思う。
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