「ファン」を用いた製品設計にCFDを役立てるには初心者のための流体解析入門(12)(2/3 ページ)

» 2020年05月15日 10時00分 公開

ファンの特性をCFDで測定したら?

 では、このような測定を、CFDで行ってみたらどうでしょうか。その結果を、図2および図3に示します。

 図2は静圧分布を示します。これが測定装置で計測される圧力になります。表示された圧力分布を見てみると、ファンから離れた場所では静圧と全圧が同じですが、ファンの直後で静圧が異なっています。これは、ファンの出口付近は流速が速いため、動圧が高く、静圧が低くなるためです。しかし、流れは徐々に拡散していきますから、この動圧分は次第に静圧へと変化していくことになります。

図2 静圧分布 図2 静圧分布 [クリックで拡大]

 しかし、図3に示す全圧分布を確認してみると、ファン直後の領域の全圧と、実際に圧力が測定される側壁の全圧が同じでないことが分かります。つまり、ファン直後の動圧が静圧に完全に変化していないということになり、測定された静圧はファンの圧力を正しく示していないことになります。そうなると、測定された静圧を使うと問題があるということになるので、静圧にファン直後の動圧を加えた全圧を用いて、ファンの開発などを行うことになります。

図3 全圧分布 図3 全圧分布 [クリックで拡大]

 ここでファンの効率を考えてみたいと思います。ポイントは、供給された動力と送風出力の比になります。そして、この際に回転する羽根車を用いるのが最もよく使われる方法です。そうすると、供給される動力は、トルクと角速度の積ということになります。つまり、式で表すと以下のようになります(式2)。

式2 式2

 さらに、ファンの送風出力は以下のように、静圧と流量から求められます(式3)。

式3 式3

 ここで、Psが静圧、ρが空気の密度、Qが流量、Aがファンの吐出口の面積です。つまり、ファンの効率ηは以下のように表すことができます(式4)。

式4 式4

 実験の代わりにCFDをファンの設計に役立てるのであれば、これらの考え方に従って解析結果を見ながら設計を進めてください。もちろん、ここからさらに、羽根車の動作原理が分かっていないと、ファンそのものの形状の設計ができませんが、それはまた別の機会にお話するとして、ここでは“ファンの効率とはこのようにして求められる”ということをご理解いただければと思います。

 ちなみに図4は、図2のファン特性に効率を合わせて表示したものになりますが、流量と圧力の組み合わせによって出力は大きく変化します。しかし、ファンのトルクの変化量は大きくないので、効率はファンの動作点次第で大きく変化することが分かります。ここから、“ファンの効率がベストなところで動作するような動作点を考えて設計することが大切である”ということがお分かりいただけると思います。

図4 ファンの特性と効率 図4 ファンの特性と効率 [クリックで拡大]

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