日立のインダストリー分野は、現場の4M(huMan、Machine、Material、Method)データを重視し、それらを経営と「トータルシームレスレスソリューション」でつなげることを目指している。そういった取り組みを複数拠点で行い、サプライチェーンによってグローバルにつなげていく。そして、リアルの世界で起こる物事を、デジタルツインによってサイバー空間で再現し、サイバー空間内でAIや分析の技術を適用して検証を行う。その結果をサイバー空間からリアル空間にフィードバックするという仕組みを構築して、企業価値を高めていくことになる。
トータルシームレスソリューションの実現に向けて重要な役割を果たすのが、多様なソリューションコア群をそろえる「Lumada」だ。Lumadaのデジタルソリューション戦略として、(1)「現場」と「経営」の「際」をタテにつなぐ、(2)サプライチェーン上の業務、企業の「際」をヨコにつなぐ、(3)オープンイノベーションで「つながる場」(協創の場)を提供し、異業種の「際」をつなぐ、の3つを推進している。Lumadaは、この協創の場にもなっており、IoT基盤を活用してパートナーのソリューション、クラウドサービス、コンサルティングサービス、アプリケーション開発環境、AIなどを共有して顧客の課題解決を目指し、企業価値を高めるハブの役割を果たす。
製造業のモノづくりの現場は人と設備によって担われているが、人材不足、熟練者不足などの現状もあって、その穴を埋める形でロボットが投入されつつある。その中で、ロボットと人、ロボットと設備、さらにロボット同士の協調が重要になってきている。
現在のロボットはハードウェアに重点が置かれているが、今後はソフトウェアにシフトしていくことが考えられる。その中で日立も、ロボットの活用や自動化によってモノづくりを最適化し、将来的には顧客の経営および事業全体の価値向上にも貢献していくことを目指している。ロボットは、人に替わって作業を行うというのが第1ステップだが、次のステップとして、バーチャルの世界で3Dで設計を行い、BOM(部品表)やコストのデータなどを含めたデジタルツインからリアルのロボットにつなげることで、人からロボットへのシフト(置き換え)ではなく、人とロボットを融合させていくことが重要だ。
従来は人から人への技能を伝承することが重要視されていた。そこに機械が入り、人が機械を操作し、機械は人を支援するという形となっている。「現在は機械から人への支援が多すぎるため、人の能力が退化するリスクがある」(森田氏)という。
将来的にはこれを、機械と機械、人と人、人と機械の相互作用から得た知識をデジタル化・共有する、人と機械が相互に高め合う仕組み(Multiverse Mediation)へ進めて行き、モノづくりや事業の競争力を高めていく。日立では多様化・高度化が進む市場のニーズに対して、IT・AI技術と、自動化・ロボティクスSIといったOTを融合させ、高度化されたバリューチェーンを提供していく構えだ。
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