ユニクロのサプライチェーン改革、デジタル技術で“トヨタ生産方式の理想”実現へサプライチェーン改革(2/4 ページ)

» 2019年11月15日 10時00分 公開
[三島一孝MONOist]

新たに提携したMUJINが担うロボットの知能化

 新たに提携したMUJINは2011年に設立された産業用ロボット向けソフトウェアおよびプラットフォームのベンチャー企業である。「全ての人のために産業ロボットを」という企業理念の下、産業用ロボットをより簡単に利用できる環境の創出を目指している。共同創業者でありCTOを務めるローセン・ディアンコフ(Rosen Diankov)氏は、ロボットアプリケーションの動作計画のアルゴリズムをテスト・開発・展開するためのオープンソースプラットフォーム「OpenRAVE」の創設者である。その技術力は高く評価されており、2016年度の「第7回ロボット大賞」で経済産業大臣賞を受賞している(※)

(※)関連記事:ロボット大賞、ティーチレスでばら積みピッキングできるコントローラーが受賞

photo MUJINのCEO兼共同創業者である滝野一征氏

 MUJINが推進するのは、ロボットの知能化である。産業用ロボットは基本的には決められた動作を決められた通りに行うもので、その動作を規定するティーチングにはプログラミングなどが必要となる。そのため多様なモノを扱う物流や倉庫の現場では活用できる領域がそれほど多くなかった。しかし、MUJINのコントローラーと3Dビジョンを活用することで、ロボットが自動的に判断して「完全ティーチレス」で使うことができるようになる。既にファーストリテイリングの海外1拠点で倉庫自動化に向けた取り組みを進めているという。

 MUJINのCEO兼共同創業者である滝野一征氏は「MUJINはロボットそのものを作っているわけではないが、どのロボットに接続してもすぐに知能化できるというのがポイントだ。物流現場では多様な製品がランダムに扱われている状況で全ての商品に対し、あらかじめティーチングしておくのは不可能である。そこで知能化が重要になる。既にMUJINコントローラーは物流現場も含めてグローバルで560台以上が導入されている。MUJIN 3Dビジョンも世界で350台以上の導入となっている。今回の提携により倉庫の完全自動化実現に貢献する」と語った。

photophoto 倉庫完全自動化に取り組む「UNIQLO CITY TOKYO」Eコマース倉庫でほぼ唯一残されていたピックアップ工程(左)MUJINコントローラーによりロボットで自動化することが可能となる(右)(クリックで拡大)出典:MUJIN

(※)関連記事:物流崩壊から2年、ユニクロが全自動倉庫に取り組む理由(後編)

棚を駆け上がるAGVがもたらす全自動倉庫の価値

photo Exotec Solutions CEOのロマン・ムーラン氏

 Exotec Solutionsは2015年創業の全自動倉庫のベンチャー企業である。最大の特徴は3次元移動ができる独自のAGV(無人搬送車)技術「SKYPOD」により効率的な自動倉庫運用ができる点である。

 AGVは秒速4mで30kgまで可搬可能で、アパレル倉庫などには最適だという。Exotec Solutions CEOのロマン・ムーラン(Romain Moulin)氏は2015年の創業後、2019年までに9システムを既に導入している。AGVについては年間1000台の生産体制を用意している他、2018年からは国際展開を開始。日本も重要な市場の1つだと考えている。ファーストリテイリングとは欧州の自動倉庫化に協力して取り組んでいく」と述べている。

photo 独自のAGVにより床面の移動だけでなく棚を登ってモノを取りに行くことができるのがExotec Solutionsの特徴だ(クリックで拡大)出典:Exotec Solutions

 これらの2社との提携により「通常では5年以上はかかる見込みの倉庫完全自動化を3〜5年のなるべく3年に近いところで実現したい」(柳井氏)としている。

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