2019年度の経営戦略に対する、杉山氏に対する主な一問一答は以下の通り。
―― 米中貿易摩擦など従来の予想とは異なるマイナスの要素も生まれているが、2020年度の中期目標は据え置きとなっている。達成の可能性についてどう考えるのか。
杉山氏 直近の状況を見ると、厳しい状況があるのは認識している。しかし、まだ2カ年もある。ネガティブな要因に対し、挽回することは可能だと考え、目標は変更しなかった。2020年度までを考えた場合、新たな事業が成果を生み出すことは難しく、現在の事業を強めることで目標の実現を目指す。現状のプラスの要因としては、自動車の電動化の動きがある。当初2022年を見込んで準備してきた電動化の動きが2020年へと前倒しする動きが出ている。こうした動きを取り込んでいけるようにする。
―― 成長けん引事業として、電力システム、交通システム、ビルシステム、FAシステム、自動車機器、宇宙システム、パワーデバイス、空調冷熱システムの8つの事業を挙げているが、具体的にはどの事業でどのように伸ばしていくのか。
杉山氏 直近で成長率が大きいのは自動車機器の電動化の影響である。自動車機器事業でも大きなプラス効果があるがパワーデバイス事業としても需要を押し上げる効果を生んでいる。また、FAシステム事業については、日本を含めてモノづくりを革新する動きが広がる中で、製造ラインの高度化や知能化ニーズが高まりを見せている。「e-F@ctory」を含めて他のシステムなどでも需要がさらに高まるとみている。
―― FAシステム事業では米中貿易摩擦の影響が大きくなるという予測だが、三菱電機では「下期から回復する」(杉山氏)という見通しを立てている。この根拠として何があるのか。
杉山氏 2019年1〜3月の中国市場におけるFAシステムの受注が少し上向きになったことから、4月の決算発表時には2019年度下期には回復傾向となるのではないかという見通しを示した。しかし、その時点から比べても米中貿易摩擦の動きは悪化しており、状況を見ながら判断しなければならないことは事実だ。
ただ、プラスの要因もある。国内の受注ベースで見ると悪い数字ではなく、中国国内についても中国政府の景気浮揚策などで新たな動きが出るとみており、上向く要素はあると考えている。
―― 生産工場についての考え方を教えてほしい。
杉山氏 三菱電機では早くから消費地生産を目指してきた。基本的にはその考え方は変わらない。地政学上のリスクのあるところについては、他の地域から供給することも考えるが、基本的には消費地に近いところで生産する“地産地消”を推進する。
―― 自動車業界におけるCASE(コネクテッド、自動運転、シェアード、電動化)に対し、三菱電機の取り組みについてどう考えるか。
杉山氏 三菱電機では自動車機器のサプライヤーとして多くの自動車メーカーに部品を供給している。その中で、自動運転については、自動車の部品だけでなく人工衛星なども含むインフラ側でも実績を持つことから、優位性を保持していると考えている。さらに、電動化についても、モーターやインバーターで優位性を発揮できる。
一方で、コネクテッドとシェアードの領域は苦手な分野である。コネクテッドについては部品メーカーとしての関係性では対応できるが、シェアードについては、その中で三菱電機がどのようなプレーヤーとなるべきかという点も含めて、考えていかなければならない。
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