流通情報システムの総合展示会「リテールテックJAPAN 2019」の「流通システム標準化の最新動向」をテーマとしたセミナーに、経済産業省 商務情報政策局 商務・サービスグループ 消費・流通政策課 係長の加藤彰二氏が登壇。「サプライチェーン流通・消費情報の活用へ向けた取り組み」と題して「電子タグ1000億枚宣言」をはじめとする流通におけるデータ活用の方向性などについて、講演を行った。
流通情報システムの総合展示会「リテールテックJAPAN 2019」(2019年3月5〜8日、東京ビッグサイト)の「流通システム標準化の最新動向」をテーマとしたセミナーに、経済産業省 商務情報政策局 商務・サービスグループ 消費・流通政策課 係長の加藤彰二氏が登壇。「サプライチェーン流通・消費情報の活用へ向けた取り組み」と題して、「電子タグ1000億枚宣言」をはじめとする流通におけるデータ活用の方向性などについて、講演を行った。
経済産業省では現在、流通・物流業を持続可能にし、利益のある産業へと変革することを目指した政策を進めている。今回は、その中からバーコード(JANコード)をRFIDに代えることで流通・物流を改革する取り組みを紹介した。
経済産業省は現行の流通・物流業界について「国内消費の縮小を前提としたビジネスプランの必要性」「人手不足の改善」「消費者意識の変化」の3つの特徴があるとみている。この中で「消費者意識の変化」については、消費者を理解するツール、データが不足していることから、ニーズ分析が十分にできていないのが現状である。
これらの課題はサプライチェーンの無駄、無理などをなくすことで改善できる可能性がある。しかし、業界内の競争がそれを阻んでいるという。各事業者が個別の情報を出したがらなかったり、連携したがらなかったりなど、個社最適、効率化を求めることにより、ロスが生まれている状態だ。このサプライチェーンの問題をまずは解決する必要があると加藤氏は訴える。
これらの流通・物流業の現状の一方で、最近の傾向としてはEC(電子商取引)の拡大がある。現在物販のうちECが占める割合は5.8%で、年間0.5%ずつ増加している。このEC化については「買い物のチャネルが代わるという以上に、そこから取ることができるデータを重要視している。ECでは、モノを買う、あるいは買わなかったという行動に至る過程が蓄積されているためで、リアル店舗の購買年齢などセグメントの分析などと違い、一人一人のIDに基づいた動向が把握できるなど、セグメントごとの分析では分からなかった結果が出ている」と加藤氏は述べる。
さらに、最近ではテクノロジーを持つ異業種の事業者が小売業に進出する動きも広がっている。加藤氏は「これらの事業者は小売りそのものよりも、データおよびそこで培ったテクノロジーを蓄積し、それを外販することを考えている。物販そのものは顧客とのタッチポイントを作るためのもので、物販そのもので利益を考えない事業者も多い。今までは『モノを売る』ということを事業の中心にしてきた主な日本の小売事業者にとっては、別の価値観を持った企業が市場に参加している状況だ」と現在の警鐘を鳴らす。
これらのデータを取得するプラットフォームを持つのは海外企業が多く、日系企業はこの環境の中で生き残っていけるのかどうかが大きな分岐点となっている。この状況を打破することを目指して、現在取り組みが進んでいるのが「店舗のスマート化」である。リアルな店舗そのものをECサイトと同じようにさまざまなデータを取得できるようにする。そしてそのデータを生かし、分析を行えるようにし、新たなサービスを提供できる場とする考えである。
異業種や海外企業の取り組みに対し、日本の事業者でも新しいプラットフォームを持つ企業が生まれることが望まれるがまだその状況には至っていない。これらに対応するコンセプトとして、経済産業省では物流・流通業界だけでなく、あらゆる産業をデータを中心に結び付けて付加価値創出や社会課題解決をもたらす「Connected Industries(コネクティッドインダストリーズ)」を推進している。
加藤氏は「今までバラバラに存在していたデータや、取れなかったデータを標準化して連携できるようにする。そうすることで大企業が1社で提供できる価値を、小さな企業が分散していても同じような価値を提供できるプラットフォームを作る。こういう姿を目指している」と方向性を紹介した。
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