多様な生産設備との容易な連携を実現、“産業用IoTのOS”がもたらすもの製造業IoT

製造業のIoT活用を象徴する動きといえば、ドイツのモノづくり革新プロジェクト「インダストリー4.0」を思い浮かべる人も多いことだろう。そのインダストリー4.0の中心企業の1つがシーメンスだとされている。オートメーションやエネルギーなどのエンジニアリングメーカーであったシーメンスがデジタル変革を主導し“産業用IoTのOS”を展開する理由は何か。その取り組みを紹介する。

» 2019年03月04日 10時00分 公開
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デジタル化に大きく舵を切るシーメンス

 製造業のIoT活用が加速している。そのきっかけとなったのは、ドイツ政府が主導するモノづくり変革プロジェクト「インダストリー4.0」だといわれている。インダストリー4.0はデジタル化により製造業のビジネス変革実現を目指したものだが、これらを推進する主要企業の1つがドイツのシーメンスだ。シーメンスはFAやエネルギー、医療機器など産業領域のグローバル総合企業である。170年以上の歴史を持ち、全世界の売上高は10兆円以上、従業員数は38万人となる。

 シーメンスは現在、「Vision 2020+」とした中期経営計画を推進しているが、この中で成長の1つの核とするのがデジタルビジネスである。

photo シーメンス デジタルファクトリー事業本部 クラウドアプリケーションソリューション部 エコシステム&パートナーシップ MindSphere IoTディレクターの浜田明氏

 その1つのコンセプトとして訴求するのが「デジタルエンタープライズ」だ。これは企業の活動を全てデジタル化することで、サイバー世界の高精度な分析や解析結果をリアルの世界で活用するというものである。製品設計、生産計画、生産エンジニアリング、製造実行、サービスまでバリューチェーン全体を、デジタルからフィジカルまでカバーすることを目指している。

 これらの中心となる考え方が「デジタルツイン」だ。これは、フィジカル世界の製品や生産設備について、それらの形や動き、特性に至るまで全てを完全にコピーしたデジタルデータの双子(ツイン)を構築するというもの。

 「サイバーの世界で製品設計やテスト、生産のシミュレーションなどのサイクルを繰り返すことで、試作や実証の時間を圧倒的に低減し、タイムトゥマーケットを短縮することができます」とシーメンス デジタルファクトリー事業本部 クラウドアプリケーションソリューション部 エコシステム&パートナーシップ MindSphere IoTディレクターの浜田明氏は説く。

シーメンスが“産業用IoTのOS”として訴求するMindSphere

 問題はこうした「デジタルツイン」をどうやって構築するのかという点である。そこでシーメンスがこれらに対応するために構築したのが産業用IoTプラットフォームである「MindSphere(マインドスフィア)」である。MindSphereは異種環境からのデータを吸い上げて活用できる形に蓄積し、さまざまなアプリケーションでこれらのデータを活用できるようにするソフトウェア基盤である。PaaS(Platform as a Service)の形で提供されている。

photo MindSphereのイメージ図(クリックで拡大)出典:シーメンス

 「多様な生産設備やシステムとの連携を実現する接続機能、データを収集して蓄積する基盤となるクラウド環境、データを分析するアプリケーションという、3つのレイヤーのソリューションを用意しています。これにより、デジタルツインの中心となるデータモデルを効率よく生成できます」と浜田氏は語る。

 MindSphereについてのもう1つの特徴が、徹底したオープン性の確保である。日本市場でもさまざまなエンジニアリング企業や電機メーカー、ITベンダーなどから産業用IoTプラットフォームが提供されるようになったが、MindSphereはそれらのいずれともシェアを争うものではない。「むしろ容易な連携をサポートすることで、ユーザーが多様な装置やシステムからより柔軟にデータを取得できるようにしたいと考えています」と浜田氏は強調する。

 具体的にはMindSphereが公開しているAPIを利用し、多くの装置やシステムからデータを取得するアプリケーションを自由に作ることができる。また「OPC UA」(OPC Unified Architecture)など、インダストリー4.0などで推奨規格とされている各種標準にも早くから対応しているため、これらの技術を採用していれば簡単に情報連携が可能となる。

 さらに、シーメンスが工場自動化のプロバイダーとして、長年にわたり培ってきた実績も大きなアドバンテージとなっている。製造現場に存在する大量の機器を多様なプロトコルでつなぐアプリケーションを資産として保有しており、素早くIoTのフレームワークに組み込むことが可能なのだ。「目指しているのは“産業用IoTのOS”です。あらゆるものをつなぎ、データを収集し活用できるようにします」と浜田氏は強調する。

 産業用IoT基盤については現在、さまざまな企業からさまざまなソリューションが登場しているが、浜田氏は「シーメンスの最大の強みが、バーチャルだけの提案ではなく、フィジカルの世界で工場や制御の領域で実績やノウハウを保有しているという点です。単純にシステムを提供するだけでなく、自社内で実践して使える形になったものをアプリケーションとして展開できます。また、デジタルツイン化に向けてはデータを取得するところで問題を抱える場合も多いのですが、これらもハードウェア含めて提案することが可能です」と強みについて述べている。

満を持してMicrosoft Azure対応を正式発表

 MindSphereの利点とは、製造現場に多く存在する大量のレガシー設備と、さまざまな種類のプロトコルを使用するアプリケーションを、簡単に素早く結び付けることが可能である点である。さらに重要なことは、これらの連携を、常に製造現場の作業を中断することなく、安全で高い可用性を維持したまま、実現できるということだ。

 そのためには高い安定性と信頼性を保ち、さまざまな用途に活用できるデジタルプラットフォームとの連携が欠かせない。そこで2019年1月、シーメンスとマイクロソフトのグローバルなパートナーシップに基づいたMindSphereのMicrosoft Azure対応が正式発表された。Microsoft Azureは製造業のデジタルトランスフォーメーションを実現する重要なプラットフォームである。

 「多くのユーザーやシステムベンダーから最も強い要望が寄せられていたのが、MindsphereのMicrosoft Azure対応でした。製造業顧客は、WindowsやSQL Server、Power BI、Officeなどマイクロソフト製品を基盤とする大量のソフトウェア資産を保有しています。MindSphereとMicrosoft Azureの連携が実現することで、Azure Machine LearningやAzure Cognitive Servicesなどのマイクロソフトが持つAI関連機能の他、これらの既存資産も有効活用したアプリケーションを迅速に構築することが可能となります」と浜田氏は語る。

 さらにMicrosoft Azureとの連携の魅力の1つが「Azure Stack」だ。「Azure Stack」は、Azure の機能やアプリケーションなどをオンプレミス環境上でもクラウド同様に実現する仕組みである。製造業では工場の中のデータなどを外部に出すのが難しい場合も多い。一方で、クラウド側が持つAIや分析などのさまざまな技術は活用したいというニーズがある。これらの両方を達成するのが「Azure Stack」である。これにより、例えば、稼働実績や生産実績などのデータを工場外に出さずに、MindSphere上で稼働するアプリケーションをクラウドと同様に使って改善活動を行うというようなことが、柔軟に行えるようになる。

 浜田氏は「既にいくつかの製造業からは対応待ちの話が出ていました。Microsoft Azureに対応したことで、Mindsphereの導入もさらに加速させられると考えています」と期待を述べている。

エコシステムを通じたアプリケーション開発

 ポートフォリオの拡充を進める中で、現在シーメンスが注力しているのが、産業用アプリケーションを開発し、流通させるパートナーエコシステムの拡大である。MindSphere上で稼働するアプリケーションは既に毎年数倍ペースで増加を続けているが、これだけでは十分とはいえないからだ。

 多くの企業のニーズを公約数として捉えた汎用的なアプリケーションでは企業ごとの差別化を打ち出しづらく、技術の陳腐化という問題も発生する。よりエッジの効いたビジネスやサービスをタイムリーに市場展開していくためには、ユーザーそれぞれの課題解決に特化したアプリケーションを開発する必要がある。

 シーメンスはこの取り組みを支えるノンプログラミングのSDK(ソフトウェア開発キット)を提供すると共に、ユーザーの個別ニーズに対応したアプリケーションを開発するパートナーを組織化しようとしているのだ。「パートナーエコシステムによって大手企業のみならず、中堅中小企業によるIoTへの参入障壁を下げていきます」と浜田氏は語る。

 MindSphereパートナープログラムに参加する企業は既にグローバルで200社を超えており、今後に向けてはマイクロソフトのAzureパートナープログラムとも相互の連携を図っていきたいという意向も示している。

複数の産業が連携しながらイノベーションを加速

 こうした取り組みの先にどんなIoTの世界が広がっていくのだろうか。シーメンスがMindSphereをリリースしたのは2016年のことだが、このIoTプラットフォームを通じてクラウドとつながっている機器やシステムは、その後の2年間で140万台近くまで拡大している。そこから得られるデータは、バリューチェーン全体を通した製品開発や生産、製造プロセスを最適化すると共に、社会インフラや複数の産業を横断的に連携しながらイノベーションを促進していくことになるだろう。

 これらのデータを本当の価値に変換するため、シーメンスは世界に60か所ほどのMindSphereのアプリケーションセンターを開設する予定だ。さまざまな産業に特化した機械学習やデータ解析のモデル開発を強化し、デジタルイノベーションを加速する方針である。

 例えばアラブ首長国連邦(UAE)のドバイでは、空港や貨物、流通分野の業務プロセスを最適化するソフトウェア開発を、同じくUAEのアブダビでは、石油やガス、水道、排水を中心としたプロセス産業向のソフトウェア開発を推進していくという。さらに、2020年に開催されるドバイ国際博覧会(万博)の会場跡地に国際物流本部を開設し、これらのソフトウェア開発の成果を生かしたIoTのインフラを実装していく計画だ。

 スマートファクトリー化の実現、もしくはモノ売りからコト売りへ――。製造業にはデジタルビジネスへの転換を図り、かつてない付加価値を顧客に提供し、その世界で確実に収益を上げていくことが求められている。

 さらに、その先を見れば、日本政府が訴える「Connected Industries」のように、社会インフラや流通、金融をはじめとする他産業とのデータ連携を実現し、社会全体の効率化を実現していく将来像が描かれている。その意味でも汎用的でオープンなデータ基盤は必須となる。シーメンスが推進するMindSphereはあらゆる産業のニーズを満たすデータ基盤となり得る。いち早くこのオープンなエコシステムに参画し、具体的なアクションを起こしていくことが得策ではないだろうか。

photo 「パートナー拡大を推進したい」と強調する浜田氏(クリックで拡大)

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製造業デジタル変革、「産業には産業のIoTシステム」が必要だ

IoTは一般化しつつあるが、スマホや製造装置が全て同じつながり方というのでは、目的を達することは難しい。産業用途においては、現実をデジタルに接続しそのフィードバックを得るデジタルツインの実現こそが大きな目的となる。


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アイティメディア営業企画/制作:MONOist 編集部/掲載内容有効期限:2019年3月31日