ブラックベリーは、東京都内で会見を開き、車載分野を中心に組み込みソフトウェアを展開するBlackBerry QNXの事業戦略について説明。自動運転車やコネクテッドカーの市場拡大により「自動車はソフトウェアドリブン(駆動)、ソフトウェアディファインド(定義)なものになっていく」と述べた。
ブラックベリー(BlackBerry)は2018年10月23日、東京都内で会見を開き、車載分野を中心に組み込みソフトウェアを展開するBlackBerry QNXの事業戦略について説明。自動運転車やコネクテッドカーの市場拡大により「自動車はソフトウェアドリブン(駆動)、ソフトウェアディファインド(定義)なものになっていく。当社はセキュアかつ安全な車載ソフトウェアを提供し、市場拡大を支えていきたい」(ブラックベリー 上級副社長兼BlackBerry QNX ジェネラルマネジャーのジョン・ウォール(John Wall)氏)という。
ウォール氏は、自動車関連でさまざまなことが話題になっていることを挙げて「確かに自動運転車や電気自動車への注目は集まっているが、それらのような“ノイズ”の背後に重要な“シグナル”が隠れている。それは、次世代の自動車アーキテクチャへの移行において、ソフトウェアが原動力になっていることだ」と語る。
実際に、自動運転車(レベル3以上)の市場規模は2025年以降急拡大するという調査結果が多い。コネクテッドカーについても、世界の12億5000万台の車両のうち現在は6%(約7500万台)しかコネクテッドではないものの、2020年には2億5000万台がコネクテッドになるという。
しかしこれらの市場の変化とともに、現在車両1台当たり100個以上を搭載しているというECU(電子制御ユニット)と、それらの組み込みソフトウェアにも大きな変化が訪れるというのがウォール氏の見立てだ。「マイコン制御の小規模なECUを多数つなげているため、OTA(Over the Air)によるアップデートが難しく、さまざまなサプライヤーから調達していることによるソフトウェアの共通性のなさや増大し続ける複雑性は大きな課題になっている」(同氏)。
自動車メーカーは、これらECUと車載ソフトウェアの課題を解決するため、多数あるECUを6〜10個のHPC(ハイパフォーマンスコンピューティング)プラットフォームにまとめ、ソフトウェアも統合していく方針を固めている。これによって、OTAによるアップデートが可能になり、多数のECUを接続するためのワイヤハーネスを軽量化することも可能になる。
その一方で、HPCプラットフォームに統合していくと、1つの大型ECUでさまざまな機能安全要件を持つ自動車の機能を管理する必要が出てくる。例えば、カーエンターテインメントシステムはISO 26262において品質を確保するだけでOKだが、次世代の自動車においてコックピットシステムとして連携するメータークラスタは安全要求レベルとしてASIL Bが求められる。1つのECUでこれらの要件を隔離するには、ハイパーバイザーによる仮想化技術が必要になってくる。
BlackBerry QNXは、ISO 26262のさまざまな安全要求レベルに対応するOSやソフトウェアを提供するとともにハイパーバイザーも提供している。さらに、スマートフォン関連でブラックベリーが培ってきたセキュリティ技術と組み合わせることにより「ECUからクルマ、そしてクラウドまで、エンドツーエンドで自動車セキュリティを提供できる」(BlackBerry Technology Solutions セールス&マーケティング担当 上級副社長のケイヴァン・カリミ(Kaivan Karimi)氏)としている。
ウォール氏は「車両全体に対するソフトウェアのコスト比率は現時点で約30%。これが自動運転車では50%まで高まるだろう。コネクテッドカーのプラットフォームを通じたデータ収集についても、GoogleやFacebookがデータを基に大きな成長を遂げたように大きな可能性がある」と語る。そして、「大きな変化が訪れている車載ソフトウェアには、現在さまざまなプラットフォームがひしめいている。しかし、最終的には1つか2つのプラットフォームに集約されていくだろう。もちろん、BlackBerry QNXはその1つになると確信している」(同氏)とした。
なお、ブラックベリーは会見に併せて、ルネサス エレクトロニクスとの仮想化ソフトウェアパッケージに関する協業や、ブラックベリーの開発コミュニティー「VAI(Value-Added Integrator)」にアイ・エス・ビーと日立超LSIシステムズが参加したことも発表した。
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