エレクトロニクス商社がなぜIoTに力を注ぐのか、その可能性と将来像製造業IoT

エレクトロニクス商社である東京エレクトロンデバイスは「IoTカンパニー」を設立し、IoT事業の本格立ち上げに取り組んでいる。エレクトロニクス商社がなぜIoTに力を注ぐのか。その取り組みと可能性について紹介する。

» 2018年03月12日 10時00分 公開
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製造業への強みを生かしたIoTビジネスを拡大

 東京エレクトロンデバイス(TED)は、半導体製造装置の大手メーカー東京エレクトロンのグループ会社である。主要エレクトロニクス商社として長年の活動を通じて、多くの製造業との関わりを持つ。さらに1985年に設計開発センターを開設して以降は、「inrevium(インレビアム)」のブランドのもとで 自社開発や設計・量産受託サービスにあたるなど、メーカーとしての機能も発揮し、商社の概念を超える独自のソリューション提供に注力する。

photo TED 執行役員 IoTカンパニープレジデントの初見泰男氏

 こうしたモノづくりに密接してきた状況から、なぜTEDはIoT(モノのインターネット)事業を収益の柱とすべく、本格立ち上げに力を注ぐようになったのだろうか。TED 執行役員でIoTカンパニープレジデントの初見泰男氏は「もともと顧客の大半は製造業です。IoTやスマートファクトリーなどへの関心が高まってくる中で顧客から『どのように取り組めばよいのか』という相談を持ち掛けられることが数多くありました」と語る。

 一方で、TEDの商材を振り返れば、IoTやスマートファクトリーなどで活用するデバイスは取り扱い商材の中に数多く含まれており、これらに対する知識や技術力なども保有している。これらを背景とし「顧客の状況をよく知っているわれわれだからこそ、IoTのハードルを下げ、始めてみようというきっかけになるような仕組みを提供することで、役立てるのではないかと考えました」とIoT事業に踏み出した経緯について述べている。

 さらに、初見氏は「『Microsoft Azure(以下、Azure)』のCloud Solution Provider(CSP)プログラムに入ったことも大きかった」と述べる。

 TEDは、1993年からマイクロソフトの組み込み系Windowsの代理店として、組み込み製品の開発支援やソフトウェア開発などに取り組んできた。また、インレビアムブランドで、製品開発や設計受託開発も行っている。これに加えて新たにAzureのパートナーとなったことで、IoTのクラウド側はAzureを活用し、エッジ側はエレクトロニクス商社として取り扱うデバイスと技術力を組み合わせることで、IoTのエッジデバイスからクラウドまでトータルで提供できる体制が整ったというわけだ。

photo IoTでTEDが持つリソース群(クリックで拡大)出典:TED

 もっとも、数あるクラウドプラットフォームの中で、なぜTEDではMicrosoft Azureを選んだのだろうか。初見氏は「デバイス側とクラウド側の双方にハイブリッドソリューションを提供している唯一のサービスプロバイダーである点が大きかった」とする。

 「工場内のゲートウェイでIoTデータの1次加工を施してからクラウドに上げたり、逆にクラウド側で構築されたインテリジェンスを生産現場の各設備に展開してリアルタイムの監視や制御を行ったりといった、いわゆるエッジコンピューティングを実現する上で、デバイス側とクラウド側の親和性は今後ますます重要な要件となっていきます。そうした製造業におけるIoTの将来を見据えたとき、もっともふさわしいプラットフォームになると考えられたのがMicrosoft Azureでした」と初見氏は利点について述べている。

低コストでIoTを体験できるPoCキットを展開

 TEDがIoTを推進する中で重視しているのが「簡単さ」と「取り組みやすさ」である。この考え方のもと、2017年1月の発売とともに大きな話題を集めたのが「TED Azure IoT PoCキット」だ。Texas Instruments製マルチセンサータグ、アットマークテクノ製Armadillo-IoTゲートウェイ 3G開発セット、NTTコミュニケーションズ OCNモバイルONE(プリペイドSIM)、Microsoft Azureクラウドサービス(利用料金2万円分を含む)、セットアップガイドを1つにパッケージングし、IoTとはいかなるものかを簡単かつスピーディーに体験できるというものだ。

photo TED IoTカンパニー エンベデットソリューション部 クラウドソリューションプロバイダーグループのグループリーダーである野崎智弘氏

 TED IoTカンパニー エンベデットソリューション部 クラウドソリューションプロバイダーグループのグループリーダーである野崎智弘氏は「まずは製造業におけるIoTへの取り組みのハードルを下げることを考えました。IoTに何らかの形で取り組んでみたくても大きな投資はできないという製造業の方々は数多く存在します。しかし、IoTはまず始めてみなければデータも集まらず、どういう知見が得られるのか分かりません。こうしたニーズに対応する『まず試してみる』ためのものが必要だと考えました」と位置付けについて語っている。

 ちなみにマルチセンサータグには温度、湿度、IR温度、圧力、加速度、ジャイロ、磁力、光の計8種のセンサーおよびマイクが搭載されている。これらのセンサーで計測されたデータはBluetoothでIoTゲートウェイに転送され、さらにそこから有線、無線LANや3G、LTE回線を経由してAzureのIoT Hubサービスに送信される。そしてStream Analyticsによる分析結果をオブジェクトストレージのBlob Storageに蓄積する他、BIツールのPower BIにも展開し、グラフィカルなダッシュボードで可視化されるという仕組みだ。

 この一連のIoTのシナリオを、わずか9万9800円で実際にすぐに試してみることができるのだから驚きだ。仮に同様のPoCを自力で行うとすれば、少なくとも100万円近いコストと数カ月に及ぶ開発期間を要することになるだろう。

 「IoTのコンセプトは大まかに理解していても、それによって何ができるのかをイメージするのは簡単ではありません。しかし、実物を目にすれば、すぐにその本質をつかめます。特に製造業のユーザーは、さまざまな課題を抱えているだけに、ユニークなアイデアも次々に出てきます。IoTへの取り組みを前進させるために最も必要なことは、そうした気付きを促すことなのです」と野崎氏は狙いを示す。

「見える化」の先のアクションを引き出す製造業向けIoTサービス

 TEDではさらに業種や用途に応じて使いやすいAzure IoTキットの拡張を進めており、機械、製造、物流、倉庫、研究、開発の各領域における特定業務をターゲットとしたソリューションとしてラインアップを拡大中である。多様なセンサーやエッジデバイス、ゲートウェイ、ソリューションを持つパートナーとの提携も進めており、2018年3月までに12種類のIoTキットをリリースする予定だ。

photo TEDのIoTキット(クリックで拡大)出典:TED

 その中で、2018年1月にリリースされた「製造業向けIoTフィールドサービス効率化支援パッケージ」はTEDのIoT戦略の中で、「見える化」の次のステップを表現したものになる。

photo TED IoTカンパニー エンベデットソリューション部のフィールドアプリケーションエンジニアである茂出木裕也氏

 同パッケージは、顧客先で稼働しているさまざまな製品に内蔵されたIoTセンサーから発せられたアラートを自動的にクラウドに集約して登録し、タスク管理につなげていくもの。「このパッケージの最大のポイントは、Microsoft Azure上のMicrosoft Dynamics 365 for Field ServiceにIoTデータを統合したことにあります」と語るのは、TED IoTカンパニー エンベデットソリューション部のフィールドアプリケーションエンジニアである茂出木裕也氏だ。

「もともとERPやCRM、SFAなど人間系の情報を扱う業務システムとして発展してきたMicrosoft Dynamics 365に、従来とは全く異質の『モノが発する情報』をつないだことで、新たな価値をもたらすソリューションに発展しました」と茂出木氏は強調する。

 実際にMicrosoft Dynamics 365 for Field Serviceに届いたアラートを開くと、その情報を発信してきた機器のセンサーの状態をリアルタイムにモニタリングすることができる。そこから明らかになった異常に対して次にどんなアクションを起こすのか、サポート案件の登録から保守要員のアサイン、作業指示書の作成、クロージングまで、関連するあらゆるタスクを一貫して管理することができるのである。

photo 製造業向けIoTフィールドサービス効率化支援パッケージで実現する世界(クリックで拡大)出典:TED

 これまでもフィールドサービス業務にIoTを適用する製品やサービスは存在したが、各種センサーから取得したデータを可視化したり、アラートを上げたりすることはできても、その後のアクションにつなげるための仕組みは、別のシステムを用意する必要があった。そのためIoT活用も「見える化」のフェーズで多くが停滞しているという状況がある。

 今回のパッケージはその障壁を越えたという意味で画期的である。「今回のパッケージは、独立していたIoTサービス開発とOT(Operational Technology)開発のプラットフォームを統一することで、フィールドサービス業務の効率化と開発工数の削減を図ることができました。今後、機械学習を用いた故障予測に基づいた予兆保守を行うことで、顧客満足度をさらに向上させることが可能になると考えています」と茂出木氏は強調する。

photo 製造業向けIoTフィールドサービス効率化支援パッケージのシステムイメージ図(クリックで拡大)出典:TED

IoTの裾野を広げることで製造業に新たな力を

 TEDではこうした一連のIoTに関する取り組みを「TED REAL IoT」として横断ブランド化し、組織横断で人材とノウハウを結集し、提案を進めている。

 例えば、スマートファクトリーなどで導入に踏み出そうとすると、技術面だけでなくさまざまな領域で、壁に直面してしまうのが現実だ。そもそも、デバイス、ITシステム、データ分析や活用といった広範な技術知識が要求される他、経営の視点からも企画化、具現化、ビジネス化(マネタイズ)といったステップを踏まなければならないからだ。

 「TED REAL IoT」は、こうした製造業におけるIoTに対する課題を捉え、より早く、より簡単に事業ベースで立ち上げるために必要な技術とノウハウをオールインワンで提供する。野崎氏は「顧客ごとのIoT活用の最終目標をイメージしつつ、それを実現する上での課題を明確化することで、目標達成への最短ルートを策定します」と訴える。

 具体的にはTED REAL IoTは、事業課題とその解決に必要な技術をマッチングするIoT設計支援サービス「Design Aid」、IoT設計における不確定な要素を検証するプロトタイプ開発サービス「Min Lab」、開発期間とコストを大幅に削減して素早くアプリケーションを展開するノンプログラミング開発環境「Connexon」といったサービスやツールを提供し、各社のアイデアをビジネスへとつなげていく。

photo 「TED REAL IoT」のイメージ図(クリックで拡大)出典:TED

 ただ、IoTによって要求される技術や知見などは、TEDの持つリソースだけではカバーできない場合も多い。他社とのコラボレーションは必須となっている。そこで重要な活動と位置付けているのが、TED が幹事を務め、日本マイクロソフトが事務局業務を担当するビジネスコミュニティー「IoTビジネス共創ラボ」だ。

 IoTビジネス共創ラボは、参加企業とのコラボレーションを通じて、さまざまなIoTのソリューションを具現化するコミュニティーで、現在441社の企業が一般会員として登録している(2018年2月14日現在)。「ビジネス」「製造」「分析」「物流・社会」「ヘルスケア」「Pepper」「ドローン」の7つのワーキンググループで活動を進めてきたが、2018年1月には新しいワーキンググループとしてARやVR、MRをテーマとした「xR WG」を発足している。

 例えば「屋外で稼働しているモーターの故障予兆を捉えた予防保守や、経済産業省と新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)が主導する電子レシートの標準データフォーマット化の実証実験など、IoTビジネス共創ラボのメンバーが関連するプロジェクトも数多く立ち上がっています。既に実運用段階にはいったIoT事例として、アクア様の次世代Cloud IoTランドリーシステムも、このIoTビジネス共創ラボで得た知見を生かしてTEDが支援しているものです。これらの動きをさらに加速させていくつもりです」と初見氏は語っている。

 TEDは今後も、こうした多層的な施策を通じて日本の製造業のIoT活用を促進。単なるデータの可視化にとどまらず、そのデータを活用した本格運用への拡張や人的リソースの最適化など、イノベーションを呼び起こす次のステップを見据えた取り組みを後押しする意向である。

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IoTによる異常検知・予兆保守はどう実現する? フィールドサービス業務の効率化

製造業向けのIoTフィールドサービス効率化支援パッケージについてご紹介。この支援パッケージで「どのような課題」を「どう解決する」をご説明します。


  • IoTのPoCフェーズで良くある「可視化止まり」を次のステップに進めるために必要な事とは?
  • IoT機器からのデータを活用する事で、従来のフィールドサービスをどのように変える事ができるか?
  • Azure IoT+Dynamics 365の構成と構築イメージ

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提供:日本マイクロソフト株式会社
アイティメディア営業企画/制作:MONOist 編集部/掲載内容有効期限:2018年4月11日

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製造業向けのIoTフィールドサービス効率化支援パッケージについてご紹介。この支援パッケージで「どのような課題」を「どう解決する」をご説明します。