――「つながる家電」と表現してしまうと、自社製品同士しか接続を保証しない狭義の「ネット家電」のようなイメージを持たれてしまいませんか?
中村氏: いろいろな企業とお話をして感じたのですが、インターネットを使うこと自体に心理的な抵抗のある企業もあります。それになんと言いましょうか、“悶々としている”企業が少なからず存在します。
製品を製造するメーカーとしては自社の製品とサービスで利用者に満足してもらいたいという気持ちがある一方、利用者としては、“A社の製品を選ぶけれど購入はB社の通販サイト”ように、組み合わせの自由を選択したいという気持ちがあります。
私たちとしてはmyThingsで実現できる、“自社だけでは提供できない、組み合わせの体験”をメリットとして提案しています。
椎野氏: アセット(ここでは代行の意味)を持っていない企業は多いですね。「A社の製品とB社のサービスを組み合わせれば、新しい体験を提供できる」場合、それをA社とB社に提案するのが私たちとなります。
――「IoTの普及」についての議論は時として、規格や技術、業界団体の話となります。こうした動向についてはどのようなスタンスとなるのでしょう。また、myThingsプラットフォームのオープン化は方向として検討するでしょうか。
椎野氏: myThingsが目指しているものは、ユーザーニーズの具現化です。その実現のためなら技術や規格は問いませんし、全てを自社で開発することもないと考えています。また、myThingsをオープンにする方向は考えていませんが、APIを提供してプラットフォームへのつなぎ込みを促進したいと思っています。
いわゆるIoT団体は規格やチップベースでの組織と認識しているので、私たちのスタンスでは問題になることはないと考えています。日本ローカルの課題を可決するだけでも相当な量になるので、日本のヤフーとしては国内での「サービスプロバイダー」として存在感を出せるはずです。もちろん、技術の検証は欠かしていませんが、どの技術を用いるかはまた別の話です。
――つながる製品を増やすために企業へアプローチし、技術のオープン化はしないとのことですが、一方で、個人開発者への利用を促す活動も行っています。個人開発者に期待することは何でしょう。
椎野氏: Maker Fairなどのイベントにも多く参加していますが、その目的は「IoTなモノを作る」楽しさを感じてもらいたいからです。IoTという存在への間口の拡大、アイデアの拡大ですね。
IoT、特にコンシューマ向けはできることが多い分だけにボンヤリとしたものとなりがちです。関わる開発者が増えないとアイデアも増えませんし、「コンシューマ向けのIoT」の拡大には、AppStoreのような法人・個人を問わない参加方法が有効ではないかと思うのです。
いちエンジニアという観点からすれば、いろいろなイベントに参加していると、ソフトウェアエンジニアがハードウェアに興味を持っているように感じます。ハード/ソフトを問わない、ハイブリッドなエンジニアが生まれれば、IoTの土壌は広がりますね。
現在、コンシューマ向けのIoTにが“もやっとしてる”のは、代表例と呼べるキラーアプリ(ソリューション)が存在しないからです。その誕生を促すための開発者支援とも言えます。
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