ロームと日本大学が開催したシンポジウムに、公益財団法人医療機器センターの理事長を務める菊池眞氏が登壇した。同氏は、これまで日本が医療機器の研究開発に大規模な投資を行ってきたことを踏まえ、「しっかりした基礎があるのだから、日本の医療機器が伸びるのはこれからだ」と主張した。
ロームと日本大学は2014年3月27日、産学連携で医療機器の開発を始めることを記念し、日本大学工学部キャンパス(福島県郡山市)にてシンポジウムを開催した。その基調講演に、公益財団法人医療機器センターの理事長を務める菊池眞氏が登壇し、日本の医療機器市場の展望を語った。
「日本の医療機器市場には追い風が吹いている」。講演の冒頭、菊池氏はこのように語った。安倍政権は医療分野を成長産業として位置付け、2013年11月には、薬事法などの一部を改正する法律が成立した。菊池氏はこれを、「日本の産業界が、安心して医療分野に参入できるインフラが整いつつある状況」だと捉えている。
2011年における国内の医療機器売上高は約2.4兆円だ。市場規模としては決して大きくない。一方で海外に目を向けると、タイやベトナムなどのASEAN諸国、サウジアラビアといった中東諸国、ロシアなどは、まさにこれから医療のレベルを大幅に上げようと取り組んでいるところだ。菊池氏によれば、こうした医療産業における新興市場では、「日本製の医療機器や設備を使いたい」といった声も聞かれるという。
菊池氏は、「過去30年間、日本政府は医療機器を開発するための基礎研究には、膨大な金額を投資してきた。それにもかかわらず、世界を席巻するような革新的な医療機器を開発できておらず、これを悲観する見方も多い。だが、しっかりとした基礎研究が行われているということは、医療機器を提供するための“発射台”が高く設定されていることだとも捉えられる。日本の医療機器は、むしろこれから伸びるのではないか」と強調した。
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